三角サンドは、上記とほぼ同様に作られ、卵、ハム、ジャムの三角形のサンドイッチを3個1組にして包装した。なお、上記作業は随所で素手で行ったことが分かった。
細菌検査の結果(残食および吐物)、調理パン(サラダ、卵)から1g当たり黄色ブドウ球菌8.6×107個(コアグラーゼZ型)が検出され、他の5検体からもコアグラーゼZ型菌が検出された。また患者の直採便5名中4名からコアグラーゼZ型菌が検出され、調理従業員の拭き取り検査などで8名中1名の手指、鼻、のどよりコアグラーゼZ型菌が検出され、道
具のステンレスべら7本よりも同型のブドウ球菌が検出された。これらのことから、この食中毒はベーカリーの調理人の1名が汚染源となり、調理パンの加工中に汚染が広がり、ブドウ球菌食中毒の発生につながったものと考えられた。なお、この事件で、発生原因となったベーカリー工場に対し15日間の営業停止処分が行われたという。
〈事例3〉幕の内弁当による中毒事例
昭和59年10月初旬、東京都内のA会館である団体の全国大会が開催され、全国から604名が参加した。この会合に昼食として出されたB店で調製した幕の内弁当により、午後1時過ぎから嘔気、嘔吐、下痢などの症状を訴える人が続出し、患者数は最終的には198名(発病率33%)にのぼった。
調査の結果、幕の内弁当の副食全体がブドウ球菌に汚染されていたが、中でも「ふきよせ卵」の汚れはひどく、1g当たり10810
9個の菌数であった。またこの食品からエンテロトキシンAが検出されたので、ふきよせ卵を中心に弁当の汚染があったものと考えられる。
B店の従業員の手指、弁当残品、患者の吐物、糞便などからコアグラーゼZ型のブドウ球菌が検出され、患者の症状とその検査結果から幕の内弁当を原因食品と断定した。
なお、B店で作った「ふきよせ卵」などの副食品は、前日の6時半頃から調理され、冷蔵保管後、当日朝6時半頃から盛り付けられた。調製から喫食まで29時間あまりたっていること、この間に調理従事者の手指などから汚染したブドウ球菌が増殖し、エンテロトキシンAを産したものと思われる。
なお、B店では通常、結婚式の引き出物用折り詰めなどをせいぜい1日100個程度作っていたのが、当日は幕の内弁当635個、さらに内容の異なった弁当、その他パーティー料理など多量の注文を受けた。このような調理能力をはるかに超えた無理な食品の取り扱いや加工などが、食中毒発生の原因となった事例は今までにもかなり多く発生している。
ブドウ球菌食中毒の特徴と予防のポイント
@症状
潜伏期は1〜6時間、平均3時間である。初め唾液の分泌が増加し、次いで悪心、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢が起こる。潜伏期の短いこと、嘔吐の激しいこと、発熱を見ないことがこの中毒の特徴で、1〜2日で完全に回復し、一般に死亡することはない。
A原因食品
本中毒の原因食品として欧米では、牛乳、乳製品、シュークリーム(またはエクレア)による中毒例が多い。わが国では、かつて、だんご、おはぎ、煮豆類で多く発生していたが、最近では、にぎり飯、弁当類、調理パン、惣菜類で多く発生している。ことに家庭では、にぎり飯による中毒例が多い。
B汚染源と汚染経路
ブドウ球菌の分布は広く、生活環境のいたるところにいるが、汚染源として最も重要なのは、食品を取り扱う人の手指などの化膿巣で、次いで鼻やのどにいるブドウ球菌で、今までの中毒例では食品の調理者の手指を介して汚染することが極めて多く、またクシャミに
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