食品添加物基礎講座 (その1)
もう一度食品添加物を見直そ
 
このパートナーを読んでおられる方々は、食品添加物に関して、すでに充分な知識をお持ちのことと考えられるが、特に近年は、国際汎用添加物の指定や消費者庁の発足など大きな変動も見られる。
これらも含めて、復習の意味で食品添加物をもう一度見直してみよう。
 
食品添加物とは
食品添加物に関しては、次のように定義されている
添加物とは、
 食品の製造の過程において 又は
 食品の加工若しくは保存の目的で、
 食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって
 使用するもの
             (食品衛生法第4条第2項)
 
また、同法第4条第1項では、食品を「薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品を除く、全ての飲食物」ということで規定している。
このことから、飲食物の製造に使われる素材(原材料)のうち、食品に該当するものと水を除いたものは、全て食品添加物に該当するということになる。
食品衛生法は、食品の衛生に関する法律であるため、「添加物」といえば、食品に使われる添加物、すなわち「食品添加物」を指すことが判るので、単に「添加物」という用語が使用されている。
この食品添加物は、法の規制の上では、次の4種類に分類することができる。
・指定添加物
・既存添加物
・天然香料
・一般飲食物添加物
次に、この4種類の食品添加物に関してもう少し詳しく見ていこう。
 
指定添加物とは
食品衛生法第10条の規定により、食品添加物は、原則として使用禁止とされており、「人の健康を損なうおそれがないものとして厚生労働大臣が定めたもの」に限って使用が認められる規定になっている。この規定に則って定められた食品添加物が「指定添加物」と呼称されているものである。
この規定で、化学的合成品(いわゆる「合成添加物」)と天然物由来のもの(いわゆる「天然添加物」)に言及していないことから判るように、食品添加物の指定制度では、その基原は問わないことになっている。
しかし、食品衛生法による指定制度が大きく改正された1995年5月以前は合成添加物だけが指定の対象とされていた。このように50年近く、指定添加物は化学的な合成品に限られていたこともあり、古い教育を受けた人々の中には、今でも食品添加物というと合成添加物と思い込んでいる人がいることも否定できない。しかし、指定制度が改正されて15年を経過して、指定添加物の概念も一般に浸透してきており、このような誤解は少なくなっている。
指定添加物のほとんどは化学的に合成されるものであるが、一部には、天然物由来のものもある。たとえばグリセリンは、合成法による製品もあるが、油脂類を分解して得られる天然物を基原とするものが主体である。また、炭酸カルシウムは、石灰石を原料として砕石・粉砕して得られるものが主体として使われており、ほとんどは天然添加物といえるものである。
2002年に食品添加物として指定された物質に、次亜塩素酸水とフェロシアン化物がある。
次亜塩素酸はかつて指定添加物出会ったが使用実績がないとして削除されたものであるが、近年次亜塩素酸を発生する機器が開発され、生鮮野菜などの殺菌に役立つものとして再指定に近い形で次亜塩素酸水として新たに指定されたものである。
一方、フェロシアン化物は輸入食塩に固結防止剤として微量配合されていたことが判明したことを受けて、食塩への固結防止剤としての使用に限る形で新規の食品添加物として急遽指定されたものである。このフェロシアン化物は、欧米で従来使用されてきたフェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化カリウムおよびフェロシアン化カルシウムの3種類を一括する形で指定されており、新しい指定の仕方として注目されるものである。
このフェロシアン化物のように海外での使用実績があり、国際的に安全性に関する評価も行われている食品添加物に関しては、国(厚生労働省)自身が指定の要請者となる形も採用され、2002年12月には一般的な食品添加物46品目(うち1品目は既指定のものと同一と判断され、実質は45品目)が公表されている。一方、香料物質に関しては、その当時約50品目が候補に挙げられていたとされる。
この新しい要請の方法に沿う形で審議された食品添加物の指定は、現在までに、一般的な食品添加物では、ポリソルベート類4品目、加工デンプン類11品目を含めてすでに26品目あり、香料でも20品目に達している。
そのほかに、一般的な食品添加物に関しては、従前のとおり、企業からの新規指定の要請に基づいた品目もあり、2009年12月時点で指定添加物の数は393品目となっている。
指定添加物の中で最大のグループは香料で、個別に指定されている98品目と、エステル類、脂肪族高級アルコール類のように類別で指定されている18品目の合計116品目であり、全体の29.5%に達している。今後この香料の比率が高くなっていくことも予想される。
ところで、2002年に香料製剤に配合されていたことから問題になったアセトアルデヒドは、プロピオンアルデヒドなどとともに炭素数の少ない脂肪族低級アルデヒド類に分類されるが、これらの短鎖のアルデヒド類は食品添加物として指定されていなかった。このため、食品衛生法第10条違反(指定外の食品添加物の使用)になったものである。このアセトアルデヒドも、現在では国際的に汎用されている香料物質として新たに食品添加物に指定され、香料としての使用が可能となっている。
この食品添加物の新規指定に関しては、物理・化学的な情報、使用に関して有効性を立証するデータ、各種の安全性に関する試験データ、一日あたりの推定摂取量、成分規格案など、さまざまな資料をまとめて、厚生労働省の担当部署(食品安全部基準審査課)に要請し、薬事・食品衛生審議会で審議される。この審議に先立って、食品安全委員会で、試験データ等を検討し、食品添加物としての安全性に関する評価が行われる。薬事・食品衛生審議会では、食品衛生分科会の下、添加物部会で審議され、食品衛生分科会での結論をもって、添加物指定のための省令食品衛生法施行規則の改正告示にいたる道筋になる。
これまでは、新しい食品添加物の取り扱い等に関して、担当部課から通知が出されてきたが、消費者庁の発足に伴い、表示方法は消費者庁(食品表示課など)から通知されることになる。
これらをまとめると、指定添加物の、指定要請から指定告示までの経過は、次のようになる。
 
申請者    厚生労働省     食品安全委員会 等
書類作成 ⇔ 事前相談  
書類提出 → 要請書受領
       安全性資料検討 → 安全性評価依頼
追加指示 ←           専門委員会検討
  回答 →          
 (パブコメ募集)
委員会に報告
評価報告受領  ← 委員会評価報告
 ↓
薬事・食品衛生審議会諮問
追加指示 ← 添加物部会検討
回答 → 
(パブコメ募集)
食品衛生分科会検討→規格等消費者庁協議
結果連絡 ← 食品衛生分科会報告
薬事・食品衛生審議会答申
 ↓
省令改正等官報告示
関連通知      消費者庁通知(表示)
 
パブコメ:パブリックコメント
食品安全委員会等
  委員会:食品安全委員会
専門委員会:添加物専門委員会
 
なお、指定された食品添加物であっても、時代の変化・食品製造の発展とともに必要性がなくなった場合、安全性に関して疑問を呈する新しい知見が得られた場合には、指定を削除されることになっている。
 
既存添加物とは
食品添加物の指定制度の主旨からいうと、いわゆる天然添加物も指定されなければならないことになる。
ところが、長年指定のいらない食品添加物として開発され、販売されてきた天然添加物は、食品業界における加工食品などの製造に定着しており、一時的にしろ、急に使用できないことになると大きな混乱が生じることが予想された。このため、国としても、天然添加物の流通を黙認してきたこともあり、食品衛生法の例外規定として使用の継続を認めることとし、1995年の時点で使用されていたことを条件として使用を許可したものが、既存添加物である。
既存添加物は、法の例外とされるものであり、食品衛生法の条文の中には規定されていない。規定は、1995年の改正に伴う附則で、次のような趣旨が謳われて規定からの除外が認められているものである。
・この法律(食品衛生法などを改正する法律)の公布の際に(1995年5月24日)、現に販売、製造、輸入、使用などが行われている添加物(化学的合成品を除く)を既存添加物名簿に収載する(附則第2条)
・既存添加物並びにこれを含む製剤又は食品には、法第8条(食品添加物の指定制度)を適用しない(附則第3条)
したがって、既存添加物は、今後新たに追加されることはなく、新しく開発された天然添加物は指定のための申請を行い、薬事・食品衛生審議会での審議を経て食品添加物としての使用を認められる必要がある。
既存添加物は、当初は489品目が名簿に収載されていたが、後述するように消除された品目もあり、2010年初めの段階では418品目となっている。
これら既存添加物には、指定添加物と同様に、甘味料、調味料、乳化剤、増粘安定剤、日持向上剤などとして使われるものが含まれているが、指定添加物にはない使用目的の苦味料、光沢剤があり、ガムベースも既存添加物が主体となっている。また、金、銀、銅や鉄などのほか、触媒となるニッケルやパラジウムのような金属、ケイソウ土や電気石のような土壌物質、酸素や窒素のような気体なども食品の製造に使用され、食品添加物に該当することから、既存添加物名簿に収載されている。
この制度が始められた当初は、既存添加物の数は、固定したものとされてきたが、2003年の食品安全基本法の制定を機とした食品衛生法改正の際に、安全性に問題がある場合あるいは長年使用の実績が認められないものは、名簿から外すこと(「消除」という)ができることが定められた(平成7年附則第2条の2および第2条の3を追加規定)。この改正を受けて、すでに、安全性の点から1品目(アカネ色素)が削除され、使用の実体がないということで、2回にわたって合計70品目が既存添加物名簿から消除されている。近いうちには、第3回目の消除予定品目が告示される予定になっている。
 
ここで指定添加物と既存添加物の比較を次表に示す。
  指定添加物 既存添加物
食品添加物の数 393 418
今後の追加の可能性 あり なし
今後の削除の可能性
 
あり
 
あり
(調査中)
合成系・天然系 区別せず 天然系のみ
安全性の確認 国で確認して指定 メーカーの自主
安全性に関する追加の確認
 
変異原性などを実施 逐次実施中
 
安全性に関する責任 メーカー、国 メーカー
成分規格 ほとんどに設定 一部に設定
使用基準 あるものが多い あるものは少ない
価格 比較的安価 比較的高価
使用量 比較的少ない 比較的多い
 
(2010年1月20日現在)
天然香料とは
天然香料は、既存添加物が定められるときに、食品衛生法で次のように定義されたものである。
動植物から得られたもの又はその混合物で、
食品の着香の目的で使用される添加物
               (第4条第3項)
 
このように定義されていることからも、天然香料が食品添加物の一つであることは明確である。さらに、天然香料の使用目的は、食品の着香に限られている。
この天然香料は、食品衛生法第10条の指定制度からは除かれている。このような特別の取り扱いを認められた理由は、食品に対して香料が使われる量が極めて少ないこと、欧米でも一般の食品添加物とは分けて扱っていることなどが考慮されたためである。
天然香料に関しては、指定添加物や既存添加物とは異なり、物質の品名が示されるのではなく、基原となる動植物612種類が公表されている。この中には、アズキ、イカのような動植物の他に、紅茶、蒸留酒、発酵酒や乳酸菌培養液、発酵乳のようなものも基原物質として示されている。
なお、天然香料と同一あるいは近似の方法で得られる動植物由来の物質でも、着香以外の目的で使用するときは、一般の食品添加物として扱われる。したがって、このような使い方をする際には、食品添加物として指定されているか、既存添加物として名簿に収載されていることが条件となる。
 
一般飲食物添加物とは
通常は食品として食べられているものでも、使い方によっては食品添加物に該当することもある。このような「一般に食品として飲食に供されるものであって添加物として使用されるもの」も食品添加物であるが、指定制度からは除くこととされている(食品衛生法第10条)。
食品添加物の側から見れば、「一般飲食物添加物」ということになる。一方、食品の側から見ると食品添加物にも使われるが「通常(は)食品」ということもできる。
この一般飲食物添加物となるものは、通知で例示されているが、着色料として使われるものが多いのが特徴となっている。この他に、増粘安定剤や製造用剤として使われるものもリストに挙がっている。
着色料として使われるものが多いのは、次のような理由がある。
・通常は食品として摂取される果汁や野菜ジュースが着色の目的で使われることがある。
・果汁や野菜ジュースやこれらの原料である果実や野菜類などから色素の成分を抽出、精製したものを着色料として使用することがある。
なお、一般飲食物添加物として認められている色素類は、原料が食品として食べられていること、抽出する溶剤が水かエタノールであることが条件となっている。
増粘安定剤として使われるものには、グルテン、マンナン、レンネットカゼインなどがある。
製造用剤としては、カゼイン、ゼラチンなどの他に、酒造用の清澄剤・ろ過助剤として使われる小麦粉、寒天、卵白などがある。
また、コンニャク抽出物(グルコマンナン)、ダイズ多糖類などは、増粘安定剤と製造用剤の両方の使用目的で使われている。
無機系の調味料として使われるものには、ホエイソルトがある。
 
食品と食品添加物の区別
一般飲食物添加物が存在すること自体、食品と食品添加物の境界が入り交じっていること示している。
かつては、食品として扱われるものと考えている人が多かった寒天でも、酒造の際に凝集性の清澄剤として使われることをリストに収載することで明白にしており、さらに増粘作用を謳えば「増粘剤」となることも指導の形で示されている。
日本では、食塩や醤油といった食品系の調味料は、使い方の如何にかかわらず、食品として扱われているが、ドイツでは食塩を食品添加物として使用したときは食品添加物であるとされてきた。食塩(塩化ナトリウム)の代替品である塩化カリウムが食品添加物として指定されていることを考えれば、このドイツの考え方の方が理論的ともいえる。
このように食品と食品添加物の境界は明確とは言い切れない。ただ、通常は食品として考えられているものであっても、一般的に食品添加物が持つと考えられる機能を期待して使用する場合、また、その機能を謳って販売する場合は、食品添加物に当たると考えることが妥当ていえる。これが一般飲食物添加物の考え方につながるものといえる。
 (2010年1月20日加筆・改訂)