食品添加物基礎講座 (その13)
味に関わる食品添加物 (3)
食品の味に関わる機能を持つ食品添加物の終わりは、味に関する食品添加物の代表である調味料についてみていくことにしよう。
 
食品の調味料と食品添加物の調味料
多くの人が調味料という言葉から連想するものは、塩、胡椒、醤油、味噌、ドレッシング類のような食品が多く、食品添加物としては、化学調味料と呼ばれてきたグルタミン酸ナトリウムなどわずかものではなかろうか。
食品の調味料は、食品を調理するときの基本的な素材として使われており、天然物だけで作られているものと考えられているむきもある。なお、これらの食品系調味料には、製造の工程で食品添加物を使用して味を調整することもある。このように食品系調味料と言えども、食品添加物の調味料が配合されている場合もあり、すべての素材が食品に限られているとは限らない点に留意する必要もある。
ただし、ここでは、食品添加物の調味料についての概略を説明することにする。
食品添加物の表示で、調味料と表示されるものには、次の4つのグループがある。
@調味料(アミノ酸)
A調味料(核酸)
B調味料(有機酸)
C調味料(無機塩)
先の例に挙げたL−グルタミン酸ナトリウムの他にDL−アラニン、グリシンなどが@のアミノ酸のグループであり、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウムなどがAの核酸のグループである。この@とAのグループが代表的な食品添加物の調味料といえる。
この他には、乳酸ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムのような有機酸の塩類およびコハク酸からなるBのグループ、塩化カリウムやホエイソルトのようなCのグループがある。
 
調味料の代表としてのグルタミン酸塩
うま味調味料とも称されるL-グルタミン酸の塩類は、調味料の代表である。中でも、グルソーと略称されるナトリウム塩は、L-グルタミン酸類が95%以上であり、食品添加物全体の中でも大きなウェイトを占めている。
L-グルタミン酸ナトリウムは、昆布だしの旨味の主体となるもので、業務用はもとより、家庭用としても、広く普及しており、年間消費量は約9万tと推定されている。
一時期、中華料理店症候群などと呼ばれる安全性に疑問があるような声も上がったが、現在では、いくつもの試験データを検討した結果、通常の添加・使用量程度であれば摂取時の灼熱感など、体調が変調を来すことはないとされている。
関連物質には、遊離型のL-グルタミン酸と、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が食品添加物として指定されているが、使用量はいずれも極めて小さい。
 
その他のアミノ酸類
アミノ酸類のうち、L-グルタミン酸ナトリウムに次いで使用量の多いものは、グリシン、DL−アラニン、L-アスパラギン酸ナトリウムなどである。
これらのうち、グリシンは、涼冷感を伴う甘味を持つアミノ酸であり、様々な食品に使用されている。一方、アラニンは、イカや貝類など水産食品の特有の旨味を構成するアミノ酸であり、砂糖と同程度の甘味もあり、微妙な味の調整に使われている。
なお、グリシンは、好気性芽胞菌などの微生物に対する静菌作用があるため、加工食品の日持ちを延長させる目的でも使われている。このような使用方法は、調味の目的での使用にはならないため、物質名でグリシンと表示することになる。
これらの他のアミノ酸類では、トリプトファン(L-およびDL-)、L-フェニルアラニン、メチオニン(L-およびDL-)、L-リシンなどの必須アミノ酸類、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニンなどの非必須アミノ酸類が遊離の酸の形やナトリウム塩などの塩の形で指定添加物あるいは既存添加物として使用されている。
 
うま味を深める核酸系調味料
5’-イノシン酸ナトリウムや5’-グアニル酸ナトリウムは、リボ核酸類のナトリウム塩である。この両者は、それぞれカツオ節および椎茸の旨味成分であり、グルタミン酸ナトリウムなどに微量併用することにより、食品のうま味を一層深めることができる。このため、通常は、他の調味料類と併用されることが多い。家庭用のL-グルタミン酸ナトリウムに配合されていることが多い。また、5’-リボヌクレオチドナトリウムと5’-リボヌクレオチドカルシウムはリボ核酸を細かく分別しないもので、同じくL-グルタミン酸ナトリウムなどに配合して使用されることが多い。
なお、既存添加物として5’-アデニル酸と5’-シチジル酸という2品目のリボ核酸が名簿に収載されている。これらは、粉乳などの強化に使われるものであり、調味料としては使われていない。
 
有機酸系の調味料
前回説明した酸味料としても使用される有機酸類のナトリウム塩やカリウム塩などは、その有機酸特有の味と塩類の味の複合した微妙な味を発揮することがある。このために、アミノ酸類などと併用して調味料として使われることがある。
なお、貝類に旨味成分として含まれているコハク酸は、そのナトリウム塩類と共に、酸味料としての使用より、調味料として使われることが多い特異な有機酸である。
また、リンゴ酸ナトリウムのように食塩の代替としてナトリウム摂取の削減を目的に使われるものもある。
なお、クエン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムは、ナトリウム塩類や、他の調味料類と共に併用されたり、製剤化して使われたりするため、一括名の範ちゅうに入る食品添加物として認められている。
 
無機塩系の調味料
塩化ナトリウムからなる食塩は大切な食品調味料であるが、摂取量の削減が呼びかけられている。このため、食塩の代替となる物質が検討されてきて久しい。代替されるものの代表的なものが、指定添加物である塩化カリウムである。ただし、食塩の全てを塩化カリウムで代替するとカリウムによる味の悪影響が出るため、一部を代替し、その他に有機酸のナトリウム塩のような代替食品添加物を併用することが行われている。
また、リン酸のナトリウム塩およびカリウム塩も他の調味料と併用されることが多く、一括名の範ちゅうに入れられている。
これらの指定添加物の他に、既存添加物の塩水湖水低塩化ナトリウム液および粗製海水塩化カリウムが食塩の代替に使われる。
さらに、乳清から得られる一般飲食物添加物(通常食品)のホエイソルトは、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの無機塩類に富んでおり、味の微妙な調整を目的として使われている。
 
調味料の食品での表示
調味料として表示される食品添加物として認められているものには、先に示した4つのグループがある。
これらのうち、いずれかのグループに属する調味料を単独あるいは複数使用した場合は、例えば、グルタミン酸ナトリウムとアラニンのようなアミノ酸類であれば、「調味料(アミノ酸)」と調味料とそのグループ名を併記する方法で、一括名としての表示が認められている。
ところが、調味料の中には、核酸類のように、アミノ酸類と併用することが、一般的なものもある。また、有機酸の塩類もアミノ酸や無機塩類など他のグループの調味料と併用することが多く見られる。このため、表示のスペースを有効に活用する意図から、いくつかのグループにわたって調味料を使用した場合には、代表となるグループ名に「等」を付けることで、簡略化することが認められている。このような例では、グルタミン酸ナトリウムを代表とするアミノ酸類による調味効果が高いものと見なされて、「調味料(アミノ酸等)」と表示されていることが多い。しかし、塩化カリウムと有機酸のナトリウム塩の併用による食塩の代替のような場合では、「調味料(無機塩等)」というように表示されることもある。
なお、一括名による表示は、スペースの有効使用という観点から認められているものであり、一部の調味料類だけを物質名(品名または簡略名)で表示し、その他を一括名で表示することはできず、このような場合は併用した調味料を全て物質名で列挙・表示する必要がある。これは、複数のグループに属する調味料類を併用した際、「等」を使わずにグループ名を併記する場合も同じことである。これらの点にも注意を払いたい。
 
   (2010年6月25日 加筆・改訂)