食品添加物基礎講座 (その9)
色に関わる食品添加物 (1)
 
食品添加物の機能のうち、今回と次回の2回は、食品の色に関係する食品添加物を見直すことにする。
 
食品の色に関わる食品添加物
食品に着色することに関しては良し悪し、好き嫌いを含めて様々な意見があるが、適切な色が着いた食品には、食欲を増すことも多い。食欲が出て、必要な栄養成分を摂取できることは大切なことである。食品の色に関しては、このような栄養摂取の面からも見直す必要がある。
食品は調理・加工される過程で、素材となる食品の色が失われこと、褪色あるいは変色することがある。加工食品では、このようなときには、消費者に受け入れやすいように色を調整する必要が生じる場合がある。
このような食品の色に関わる食品添加物には、着色の目的で使用されるものの他にも、いろいろな目的で使われている。そのような、色に関わる食品添加物には、次のような機能を持つものがある。
 
・漂白剤
・発色剤
・着色料
・呈色安定剤・色調安定剤
・光沢剤
 
これらの作用を組み合わせることにより、食品の適切な色が得られることになる。
今回は、これらの色に関する食品添加物のうち、着色料以外のものを概括する。
 
綺麗な下地をつくるときにも使われる漂白剤
食品の加工中には、変色すること、求められていない色が着くことなどがある。このようなときには、色抜きすることがある。この色抜きに使われるものが漂白剤である。また、着色する前に一旦脱色してきれいな下地を作ると、着色が鮮明になる。このような下地作りの目的で漂白する場合もある。
漂白剤には、酸素などによる酸化作用を用いる漂白するものと、逆に還元作用を用いて漂白するものがある。
酸化作用を用いるものには、過酸化水素、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムおよび高度サラシ粉がある。このうち、過酸化水素と亜塩素酸ナトリウムには、使用基準で、最終食品の完成前に、分解あるいは除去することが決められている。
過酸化水素は、長い間、漂白処理後、酵素カタラーゼで分解する方法でカズノコの処理に限って使われてきた。近年、生シラスがカタラーゼ活性を保有していることを活用した生シラスへの使用も検討されている。
亜塩素酸ナトリウムは、水洗する方法が一般的である。この亜塩素酸ナトリウムは使用基準で、使用可能な食品が限定されており、注意を払う必要がある。次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムが主要成分である高度サラシ粉には、分解や除去に関する規定は設けられていないが、残存すると塩素臭がでるため、食品に適さない製品になる。このため、分解や洗浄で除去することが一般的である。
還元的な漂白には、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムや次亜硫酸ナトリウムなど亜硫酸塩系の5品目があり、対象となる食品、最終食品での残存量に関して使用基準が設定されている。
漂白剤は、加工食品等の原材料表示に際して、用途名となっている。分解・除去が定められていて、最終食品に残存しない場合は加工助剤と見なされるが、残存する場合には表示の対象となり、物質名と用途名である漂白剤を併記することになる。
ところで、生鮮野菜などに関しては、リン酸など、漂白剤以外の食品添加物を使用して漂白が行われた事件もあり、鮮度を誤解させるような化学的な処理を行うことを通知で禁じている。この点に関しては、適正な食品添加物の使い方に努めるよう、留意する必要がある。
この項で挙げた漂白剤のうち、酸化系のものは殺菌料としても使われ、また、亜硫酸塩類は酸化防止剤および保存料としても使われる。使用する際には、いかなる効果を期待して使うのか、充分に考慮すると共に、表示に反映させる必要がある。
 
食品の色を明瞭にする発色剤
ハムを作るときに硝酸塩類が使われることは、比較的良く知られていることであろう。ハムやソーセージなどの食肉加工品に使われる食肉中の色素成分であるヘモグロビンやミオグロビンが亜硝酸と反応することにより、肉の赤色が明瞭になり、安定化する。このような硝酸塩類としては、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムおよび硝酸ナトリウムが使用される。硝酸塩類は、食肉に含まれる硝酸還元菌により亜硝酸になり反応するものである。ハムなどに使われるこれらの硝酸塩類は、発色機能の他に、原料肉に随伴しやすいボツリヌス菌などの病原性微生物の増殖を抑える機能を有するため、ドイツなど欧州では必須の食品添加物とされている。
硝酸塩類は、対象食品と使用量が使用基準で定められており、この基準を遵守して使う必要がある。
また、これらの硝酸塩類は、肉や魚介類に含まれるアミン類と反応して発ガン物質であるニトロソアミンを生成する可能性が指摘されているが、生鮮野菜などに含まれる自然体の硝酸類の量が圧倒的に多く、食品添加物から食品をとおして摂取される量をはるかに小さいものとなっている。
ところで、発色剤は、食品の原材料表示に際して用途名とされている。このため、使用した食品添加物と用途名を併記することが求められる。厚生労働省の通知による用途名の例示では、発色剤としては、硝酸塩類3品目が挙げられており、次に説明する呈色安定剤に使われる品目は例示されていない。
 
食品の色調を安定させる呈色安定剤
素材として使用される食品の色をより鮮明に発色させるもの以外に、食品の色を安定化して褪色を防ぐことへの要望も大きい。この食品そのものの色あるいは発色した色の色止めを目的として使われるものが呈色安定剤あるいは色調安定剤などと呼ばれる食品添加物である。
この呈色安定剤には、次のようなものがある。
 
・グルコン酸第一鉄:オリーブ(黒色)
・硫酸第一鉄:黒豆、オリーブ(黒色)
・ミョウバン類:なす、栗の甘露煮など
 
ここでミョウバン類とは、硫酸アルミニウムアンモニウム(アンモニウムミョウバン)および硫酸アルミニウムカリウムがあり、色止めの目的では、焼ミョウバンと呼ばれるミョウバンの乾燥品が使われることが多い。
なお、ビタミンB類であるニコチン酸およびニコチン酸アミドも、食肉の赤色を鮮明にする機能も知られている。しかし、生鮮食肉類に使用した場合には、その肉を食べたときに赤疹や痒みを発症する人がいるため、加工していない食肉や鮮魚介類・鯨肉には使用することが認められていない。このためニコチン酸類は、呈色安定剤としては、食肉加工品に使われている。
家庭で、黒豆を炊くときに色止めとして鉄釘あるいは金槌を入れることなども同じ呈色安定剤の目的である。
 
食品の艶を出す光沢剤
食品の色に関わる食品添加物の中では、特異な位置にあるのが光沢剤である。光沢剤は、その他の色に関わる食品添加物とは異なり、食品の色に直接関わるものではなく、完成した食品をコーティングすることにより、食品の色に関わるものである。
光沢剤は、表示のための一括名として認められており、次のように定義されている。
 
食品の製造又は加工の工程で、食品の保護及び光沢を与える目的で使用される添加物及びその製剤
 
ここに示されたように、付与された光沢により、食品の表面が保護されると共に艶が出て、色も鮮明に見えるようになるもので、菓子類などでよく使用される。
この光沢剤に使用される食品添加物は、全て天然系のものであることも特徴の一つとなっている。この光沢剤は、チューインガムにガムベースとして使用される品目のうち、カルナウバロウやシェラックなど、表面コーティング作用があるもの(ロウ類)が使われる。
 
      (2010年4月25日 加筆・改訂)


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