迅速性を中心にしたものであるが、完成された方法とは言えないし、また乳製品以外の食品に適用し得る方法とも言えない。米国FDAでは一般食品に適用できる方法を提唱しているが、これも暫定的な方法のようで、さらに確実で迅速なリステリア菌検査法の確立が急務とされている。
文献
1)丸山 努:New Food Industry、30(9)、22(1988)
2)丸山 努:食品検査ニュース、栄研化学、No.28、(1989)
3)丸山 努:乳技協資料、38(6)、25(1989)
4)Brackett、R.E.:Food Technol.、42(4)、161(1988)
ワンポイント・レッスン
致命率がずば抜けて高いリステリア症と日和見感染
わが国で発生するリステリア症は年間40〜50例、北は北海道から南は沖縄県まで広発生している。1986年(昭和61年)までの事例について見ると、患者572名中164名が死亡し、致命率は28.7%と高率であるが、一般に乳幼児より成人の方が高く、ことに50歳以上の致命率が著しく高いのが特徴である。諸外国における本症の致命率を見ると、16.0
〜44.1%、平均30.5%と高率である。これに対し、サルモネラなどの感染型食中毒では致命率は1%以下、赤痢・腸チフスなど経口伝染病を含めた多くの細菌感染症では、近年抗生物質など治療法の進歩も加わり、致命率は昔に比べ比較にならないほど低下した。
一般に、宿主の健康状態が正常であれば、消化管などに常在する微生物は病原性を発揮することはない。しかし、抗生物質の長期使用などにより常在細菌叢(ミクロフローラ)がかく乱されたり、あるいはなんらかの原因で宿主の抵抗力や免疫性が低下したよ
うなときには、本来なら病原性のない常在菌や外来性の微生物が病原性を発揮することがある。これを日和見感染(opportunistic infection)と呼んでいる。リステリア症についても、特に白血病などにより免疫機能の低下した患者は正常人に比べリステリア菌に日和見感染するケースが多く、かつ、また致命率が高いという。
(河端俊治:国立予防衛生研究所食品衛生部客員研究員・農学博士)
|