食品添加物基礎講座(19)
食品添加物と表示 (その1)
食品における表示事項(1)
食品、特に加工食品、においては、食品衛生上および健康上求められる情報を消費者に提供する目的で、さまざまな事項を表示することが定められている。これらの表示に関しては、多くの解説がなされているが、再確認する意味で、この稿でも、しばらく表示について説明する。まず、食品に表示する事項を概括的に見直そう。
加工食品等における表示に関する法規類
食品には、いくつかの法律に従って、さまざまな事項を表示することになっている。
表示を定める基本的な法律は、厚生労働省が所轄する「食品衛生法」と、農林水産省が所轄する「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」という長い名称を持つ、いわゆる「JAS法」である。
この他、公正取引委員会が所轄する「不当景品類及び不当表示防止法」(「景表法」)にも、食品に関して規定しているものがある。
表示の実際に関しては、それぞれの法律に基づく次のような省令や告示などで定められている。
厚生労働省所轄の法規類
食品衛生法
食品衛生法施行令、
食品衛生法施行規則、
乳及び乳製品の成分規格に関する省令(乳等省令)
健康増進法
健康増進法施行規則、
栄養表示基準
農林水産省所轄の法規類
JAS法:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律
加工食品品質表示基準
これらの法規類における表示に関する基本的な規定は、次のようなものである。
まず食品衛生法では、次のように規定されている。
食品衛生法 第19条
厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品若しくは添加物又は規格基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。
2 前項の規定により表示につき基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。
この規定に続いて次のように虚偽の表示等が禁じられている。
食品衛生法 第20条
食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない。
さらに、この表示等の規定に違反した場合の罰則が次のように定められている。
食品衛生法 第72条
第11条第2項、第16条、第19条第2項、第20条又は第52条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者には、情状により懲役又は罰金を併科することができる。
これら食品衛生法の規定に基づいて、食品衛生法施行規則第21条で詳細な表示に関する基準が定められている。
この食品衛生法施行規則では、栄養の目的で使用した場合の食品添加物の表示を免除規定があるが、栄養成分の表示に関しては、「健康増進法」により対象となる栄養成分とその表示方法等が規定されている。
一方JAS法では、次のような規定がある。
JAS法 第19条の8
農林水産大臣は、飲食料品の品質に関する表示の適正化を図り一般消費者の選択に資するため、農林物資のうち飲食料品(生産の方法に特色があり、これにより価値が高まると認められる者を除く。)の品質に関する表示について、農林水産省令で定める区分ごとに、次に掲げる事項のうち必要な事項につき、その製造業者又は販売業者が守るべき基準を定めなければならない。
一 名称、原料又は材料、保存の方法、原産地その他表示すべき事項
二 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者又は販売業者が遵守すべき事項
2 農林水産大臣は、飲食料品の品質に関する表示の適正化を図るため特に必要があると認めるときは、前項の基準において定めるもののほか、同項に規定する飲食料品の品質に関する表示について、その種類ごとに、同項各号に掲げる事項につき、その製造業者又は販売業者が守るべき基準を定めることができる。
JAS法 第22条
この法律の規定は、食品衛生法又は不当景品類及び不当表示防止法の適用を排除するものと介してはならない。
これらの規定に基づいて省令「加工食品品質表示基準」で、横断的な表示に関する基準が定められている。さらに、個別の品質基準および品質表示基準が定められている加工食品もある。「加工食品品質表示基準」の中には、有機農産品など、特色のある原材料を使用した食品での表示方法等も規定されている。
食品(加工食品)における表示事項
前述したように、食品にはいくつかの法規類の定めにより、さまざまな事項が表示される。その概要をまとめると、次のようになる。
表示項目 |
食品衛生法 等 |
JAS法 |
対象食品
|
加工食品
+(指定食品*) |
加工食品
|
|
<包装された食品> |
<包装された食品> |
名称 (品名)
|
○
|
○
|
原材料
素材食品 |
|
○ |
特定原材料 |
○ |
○ |
遺伝子組換え情報 |
○ |
○ |
その他指定情報 |
○ |
|
食品添加物 |
○ |
○ |
原産地に関する情報 |
○(除外規定あり) |
○ |
期限に関する情報 |
○ |
○(除外規定あり) |
保存方法 |
○ |
○ |
栄養成分 |
健康増進法 |
|
内容量 |
|
○ |
製造者氏名・住所
(輸入者氏名・住所) |
○
|
|
販売者氏名・住所 |
可(製造者固有記号) |
○ |
対象となる食品は、包装された加工食品であり、ばら売りの食品、その場で組み合わせる対面販売の食品などは対象外となっている。
ところで、表示する文字(活字)の大きさは、食品衛生法とJAS法の整合が図られた結果、食品衛生法に基づく表示における最少の文字がやや大きくなり、次のように規定されている。
8ポイント(JIS活字12級)以上
ただし、表示面積が小さい(30〜150cm2程度)場合は、5.5ポイント(JIS活字8級)から7.5ポイント(JIS活字11級)で表示することが認められている。
なお、酒類に関しては表示面積が150cm2程度以上の場合でも従来のとおり、7.5ポイント以上の文字で表示することとされている。
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