食品添加物基礎講座 (その2)
食品添加物の役割
前回、食品添加物を食品衛生法上の規定からから4種類に区分できること、それらの定義はどうなっているかなどを中心に食品添加物を見直した。今回は、そのような食品添加物が食品の製造などにおいて果たされる役割について見直してみよう。
食品添加物の役割
食品添加物は、前回、用語の定義で見てきたように、「添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」(食品衛生法第4条第2項)とされている。
この定義を、食品添加物の使われ方として見ると、次の3点に集約される。
・食品の製造の過程で使用されるもの
・食品の加工の際に使用されるもの
・食品の保存の目的で使用されるもの
つまり、食品添加物を使うことは、食品の製造または加工に必要であれば、さまざまな目的で可能ということができ、さらに、これに加えて、できた食品の保存性を向上させる目的での使用も可能になっているといえる。
一方、新たに食品添加物として指定を要請する場合には、要請の条件として、厚生労働省の通知により、次に示す要件を満たすことが求められている。
人の健康を損なうおそれがなく、
かつ、
その使用が消費者に何らかの利点を与えるもの |
はじめの条件である「人の健康を損なわない」ということは食品関連の物質としては当然のことである。2つ目の条件である「消費者に与える利点」に関しては、次に示すいずれかの有効性が認められることが求められている。
・食品の栄養価を保持するもの
・特定の食事を必要とする消費者のための食品ら製造に必要な原料又は成分を供給するもの
・食品の品質を保持し若しくは安定性を向上するもの又は味覚、視覚等の感覚刺激特性を改善するもの
・食品の製造、加工、調理、処理、包装、運搬又は貯蔵過程で補助的役割を果たすもの
このように食品衛生法における定義および指定の基準に示されているものから、食品添加物の役割である使用目的を大きく分けると、次のようになる。
・食品の製造の過程で必要とされるもの
・食品を形作るために必要なもの
・食品の感覚刺激を改善し、嗜好性を高めることを目的とするもの
・食品の栄養成分の補填・強化を目的とするもの
・食品の品質を維持することを目的とするもの
次に、これらの使用目的を簡単に概観しよう。
製造の過程で使用される食品添加物
上記に挙げた5種類の使用目的のうち、ここで取り上げる食品の製造の過程で使用されるものに分類される食品添加物は、加工食品の製造の過程(中間段階)で使用されるものである。
この製造の過程で使用される食品添加物は、その他の目的では使用されることが比較的少ないことも、特徴の一つである。このような食品添加物には次のようなものがある。
・酸あるいはアルカリ
・(抽出用)溶剤
・消泡剤
・ろ過助剤
・離型剤
・イオン交換樹脂
・吸着剤
なお、製造の過程で使用される食品添加物の中にも、次のように、食品を形作るためなど、他の目的でも使用されるものもある。
・かんすい(中華麺の製造に必須とされる)
・pH調整剤
・増粘剤・安定剤
食品を形作るために使用される食品添加物
豆腐、ゼリー、プリン、食パンやビスケットなどのように、食品にはそれぞれ特有の形態がある。また、液状の加工食品には、澄明な液体、乳化状態の食品、懸濁状の液体食品などもある。このような形態と共に、食感も食品の特性を表すも大切な因子である。そのようなさまざまな食品の形態を形作るために必要とされる食品添加物が、ここで取り上げるものである。
・豆腐用凝固剤
・コンニャク用凝固剤
・ゲル化剤
・膨脹剤
・増粘剤
・乳化剤・乳化安定剤
・プロセスチーズ用乳化塩(乳化剤)
・ガムベース・チューインガム基礎剤
・チューインガム軟化剤
・結着剤
・清澄剤
嗜好性を高める目的で使用される食品添加物
同じ栄養価の食品であっても、食べたくなるものと、あまり食欲のわかないものがある。
この食欲に大きな影響を持つものは、味であることはもちろんであるが、その他にも形、色、匂いなどによって食欲が増す場合と、食欲が減退する場合がある。
このように、食品にとって嗜好性は大切な因子となる。食品の嗜好性にかかわる因子のうち、食品の形態を除いたものには、次のようなものがある。
・食品の色
・食品の味
・食品の匂い
先ず、食品の色に関しては、単に色を付けるだけではなく、前処理として脱色したり、漂白したりすることもある。また、食品に着いた色を安定させることもある。このように色にかかわる食品添加物には、次のようなものがある。
・漂白剤・脱色剤
・着色料
・呈色安定剤
・光沢剤
次いで、味に関しては、甘さ、酸っぱさ、しょっぱさ、苦さという、食の基本味と言われる4味と補助的な味と言われる辛みがあり、さらに、日本ではさまざまな旨みといわれる味がある。これらの味を付ける目的で使われる食品添加物には、次のようなものがある。
・甘味料
・酸味料
・調味料
・苦味料
・香辛料抽出物
このうち、調味料には、アミノ酸類、核酸類、有機酸類および無機塩類があり、無機塩類の中には、塩味又は鹹味(かんみ)と呼ばれる「しょっぱさ」を付与するものも含まれている。
また、匂いにかかわるものとしては、次のものが使われている。
・香料
栄養成分の補填・強化の目的で使用される食品添加物
加工食品は生鮮素材からさまざまな製造工程と流通過程を経て食卓に上る。この製造または加工および流通の過程で、分解したり、流出したりすることによって生鮮素材に含まれていた栄養成分がなくなったり、減少したりする場合がある。このような栄養成分を補填する目的で使用される食品添加物がある。また、乳児用の食品である調整粉乳などでは、母乳にある栄養成分が不足している場合もある。このような栄養成分を強化して母乳に近い成分にする目的で使用される食品添加物もある。
このように栄養成分の補填や強化を目的に使用される食品添加物は、強化剤と一括されているが、次のようなものに分けられる。
・ビタミン類
・アミノ酸類(主として必須アミノ酸類)
・核酸
・ミネラル類
(カルシウム塩、鉄塩、マグネシウム塩、
亜鉛塩、銅塩)
このうち、核酸に関しては、既存添加物として認められた2種類の核酸が、強化の目的に使用されるものに該当している。
なお、ミネラルに関しては、近年マグネシウム塩が追加されたが、今後の栄養学の研究の進展とともに、強化の目的での使用が認められてミネラルとして追加されることも考えられる。
品質を維持する目的で使用される食品添加物
加工食品は製造された後、流通過程に入り、販売され、家庭で保存された後、消費されることになる。このように、製造後、食品として消費されるまでには、ある程度の期間が見込まれることから、この間に品質が劣化せず、品質が維持できるようにする必要がある。この品質の維持を目的として使用される食品添加物には、次のようなものがある。
・殺菌料
・酸化防止剤
・保存料
・防かび剤
・日持向上剤
このうち、殺菌料は食品の製造の前処理として使用されることが一般的であり、食品の製造の過程で使用される食品添加物ともいえる。防かび剤は、柑橘類などの生鮮果実の輸送・貯蔵中のかびの発生を抑える目的で使用されている。その他の酸化防止剤、保存料および日持向上剤は、食品製造の中間あるいは最終工程で使用されることが一般的である。
このように、加工食品の製造のさまざまな段階で、さまざまな目的で使われる食品添加物をその機能の面から分類すると、次の表のようになる。なお、嗜好性の付与で使われる食品添加物は、色と味に分けて表にしている。
食品添加物の機能 |
おもな食品添加物群 |
食品を製造または加工するときに必要とされる
|
溶剤、製造用剤類、酵素、
pH調整剤、イーストフード、
かんすい、消泡剤、
(乳化剤)、(安定剤)、
(乳化安定剤) |
食品を形作る、あるいは、独特の食感を持たせる
|
膨脹剤、乳化剤、(豆腐用)凝固剤、
(かんすい)、
コンニャク凝固用剤、
ゲル化剤、増粘剤、安定剤、
ガムベース、軟化剤 |
食品の色に寄与する
|
漂白剤、発色剤、着色料、
色調安定剤、光沢剤
|
食品の味などに寄与する
|
甘味料、酸味料、苦味料、
香辛料抽出物、調味料、
香料
|
食品の栄養成分を補う |
強化剤(ビタミン,アミノ酸,ミネラル) |
食品の品質を保つ
|
殺菌料、保存料、酸化防止剤、
日持向上剤、防かび剤 |
今回見直したさまざまな役割を持つ食品添加物については、今後それぞれの機能別に、さらに詳しく見直していくこととする。
(2010年1月20日 加筆・改訂)
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