食品添加物基礎講座(20)
食品添加物と表示 (その2)
食品における表示事項(2)
前回は、特に加工食品で求められる表示に関して、全般的な規定について説明した。これからは個々の事項について、もう少し詳しく見ていくことにする。
今回は原材料表示以外の表示を見直す。
 
食品の名称
加工食品には、その食品の名称を表示することが定められている。食品名は消費者にその特質を報せる大切な情報の一つである。
このような食品としての名称としては、「乳等省令」で定められた乳製品などの名称、「JAS法」で定められた品名があり、「食品,添加物等の規格基準」の第1食品の部で成分規格などが定められた食品の名称などが法規で定められたものであり、業界が公正競争規約を設定する際に認められた名称もある。
これらの名称だけでは、数ある食品を網羅することはできないこともあり、厚生労働省では、通知によって例示する形で、食品の名称を示している。
この通知での例示は、食品を大分類、中分類および小分類に分けて例示しているもので、現在は、1979年(昭和54年)11月8日付けの通知<環食第299号>の別表2として公表されている。
その形式は次のようなものである。
大 分 類 中 分 類 小 分 類 備 考
清涼飲料水





 
炭酸飲料


 
炭酸水
サイダー
ラムネ
コーラ



 
果実飲料 (省略)  
冷凍果実飲料 (省略)  
鉱(泉)水 (省略)  
 
この通知の別表第2には、30を超える大分類が示されている。現在は、カップに入れられていて、生菓子として扱われることかが多いゼリーは、かつては硬い菓子が主力だったことから、キャンデーに分類されている。このように、分類がまとめられた時代と現在では、食品の範疇も異なっている場合もある。さらに、食パンなどのパンの分類がないなど、必ずしも完全なものではない。なお、あんパンなどの菓子パンは大分類である生菓子の下の中分類にあり、ラスクなどの生菓子以外の菓子パン類は、大分類の菓子の下で中分類に入れられている。このように、全ての食品が例示されているわけではなく、収載されていない食品もあるが、食品の名称を表示するときには大切な指針である。
多くの食品では、表示に際して「名称」というタイトルが使われているが、「品名」が使われていることもある。また、品名と名称が共に使われているときもあり、その場合は、次に示す例のように、品名では商品名あるいは具体的な内容を表示し、名称に通知の例示にあるものが表示することが一般的なようである。
 
名称     焼菓子
品名     菓子詰め合わせ
原材料名   バター,卵,砂糖,粉,(以下省略)
 
品 名:    うす塩味梅干し
名 称:    調味梅干し
原材料名:梅、漬け原材料[(省略)]
 
食品の名称を表示する項目名としては、上記の他に、チーズなど、乳等省令で定められた食品で使用されている「種類別」もある。
食品メーカーは、名称に関しても、自社製品の依拠する法規に沿う形で適切な表示に努める必要がある。
 
原産地に関する表示
日本の食品およびその原材料は、さまざまな国から輸入されている。このために、食品を製造した国あるいは地域、原材料となる食品素材の収穫地などに関しても、表示すべき事項が定められている。
JAS法では、生鮮食品および一部の加工食品に関して、その原産地(輸入品にあっては原産国)を表示することが、定められている。
加工食品で原料の原産地表示に関して加工食品の品質表示基準および個別の食品の品質表示基準で規定があるものは、現時点では次のとおりである。
 
コンニャク
農産物漬物、野菜冷凍食品、
異種混合したカット野菜類
乾燥きのこ類、塩蔵きのこ類、ゆで又は蒸しきのこ類
乾燥野菜および乾燥果実、塩蔵果実および塩蔵果実、
ゆで又は蒸し野菜、ゆで又は蒸し豆類並びに餡、
いりさや落花生、いり落花生、いり豆類
緑茶
干し海苔、焼き海苔、干した海藻類、塩蔵海藻類、
ゆで又は蒸し海藻類、調味海藻類
素干魚介類、塩干魚介類、煮干魚介類、塩蔵魚介類、
ゆで又は蒸した魚介類、表面をあぶった魚介類、
調味魚介類、フライ種用衣付け魚介類
うなぎ加工品、かつお削りぶし、
ゆで又は蒸した食肉、表面をあぶった食肉、
調味食肉、フライ種用衣付け食肉
ゆで又は蒸した食用鳥卵
 
今後、表示すべき対象食品に関する検討が進められており、さらにいくつかの加工食品に拡大される予定であり、注意していく必要がある。
表示に当たっては、国内生産物に関しては「国産」の文字あるいは特定の地域を示す名称を表示し、輸入品は原産国名あるいは収穫地域等を表示することとされている。表示箇所は、別欄を設ける方法の他に、原材料表示の中で、当該原材料の後に( )書きで表示する方法も認められている。
 
期限に関する表示
どのような食品でも、食べるに適した時期を超えて食べるに不適となる時期がある。このため、適切な可食期間を示す表示を行うことが定められている。
ところで、加工食品には保存が利かず、短期間で傷みやすいものと、長期の保存が可能なものがある。このため期限表示に関しては、次の2種類の表示方法がある。
 
消費期限:短期間(おおむね5日以内)に品質の急速な劣化がはじまる食品に関して、示された条件下で保存した場合に、安全性が確保できる期限を年月日で表示するもの。
賞味期限:一般の食品に関して、示された条件下で保存した場合に、品質の保持が十分に可能である期限を年月日で表示するもの。ただし、その期間が3ヶ月以上ある場合は、年月だけで表示することが認められる。
 
この期限表示は、表示すべき期限の種類を明記した後に、年月日を表示することになる。その年月日の表示は、西暦表示でも元号表示でも良いとされており、これらには次のような表示の仕方がある。
 
@
A
B
C
2006年3月1日
06.3.1
06.03.01
060301
平成18年3月1日
18.3.1
18.03.01
180301
 
この年月日表示のうち、原則的に認められているものは、それぞれの書き方の@〜Bであり、Cの書き方は、@〜Bでの表示が困難な場合に認められる特例である。
年月日に区切りをつけない方法での表示は6桁での表示に限られていることに留意する必要がある。
 
品質の変化が極めて低く保存性が高い食品に関しては、この期限表示を省略することも認められている。この省略できる食品は、食品衛生法施行規則、乳等省令、JAS法の加工食品品質表示基準などで定められているが、それらの調和をとって適切に表示する必要がある。
 
保存方法の表示
食品の期限表示は、適切な条件下で保存することが前提となっている。このためには、適切な保存方法を周知する必要がある。
「食品,添加物等の規格基準」や「乳等省令」等で保存方法に関する基準が定められている食品に関しては、その内容を表示することになる。その他の食品に関しては、食品メーカーが品質保持の期間を念頭に入れて適切な保存方法を表示することになる。
この際、冷蔵庫などでの保存温度を指定する必要がある場合は、その温度を明示する必要がある。たとえば、「冷所保管」や「冷暗所保管」という表示は、その条件が特定されず、表示方法としては一考を要する。
また、この保管の条件は、当然流通段階でも守られるべきものであり、食品メーカーおよび流通業者はこの点にも注意を払う必要がある。
 
使用方法または調理方法の表示
食品によっては、使用する人に、素材食品として使用する際の注意事項あるいは喫食する前の調理の仕方に関する注意事項を、知らせる必要がある場合もある。このような場合には使用方法あるいは調理方法に関する情報を表示することになる。
これに関しても法的に定められている場合もあるが、法的な規定がない場合でも、適切な表示が望まれる。


ホーム 参考資料 に戻る。