食品添加物基礎講座(21)
食品添加物と表示 (その3)
食品の原材料の表示(1)
食品の表示事項の中で、食品添加物に関連する部分は、主として原材料表示の箇所である。今回はこの原材料に関連する表示の概要を説明する。なお、前回説明した原料原産地に関する表示の原則は除く。
 
アレルギーに関する情報
人によっては食品に微量に含まれる成分に反応してアレルギー症状を発症することがある。このアレルギー症状が重篤な場合には、死に至ることもある。このようなアレルギー症を持つ人に、食品に使われている原材料に関する情報を提供することは、必須のことになる。このために、食品衛生法で情報の提供が定められている。
 
アレルギーに関する特定原材料等に関する表示
食品に使用した原材料およびその原料に、アレルギーを発症させる可能性があるとされているものが使われている場合には、次の基準で、表示を行う。
 
表示が義務づけられている特定原材料(5品目)
食品衛生法施行規則別表第6で次の原材料が指定されている
乳(生乳、牛乳、加工乳を含む)
(山羊乳、めん羊乳等は除く)、
卵(鶏卵、あひる卵、うずら卵を含む)、
小麦、そば、落花生(ピーナッツ)
 
表示が推奨される特定原材料以外の原材料(20品目)
牛肉、鶏肉、豚肉、ゼラチン
あわび、いか、えび、かに、
さけ、いくら(筋子を含む)、さば、
オレンジ(うんしゅうみかん、夏みかん、はっさく、グレープフルーツ等は除く)、
キウイフルーツ、くるみ、
大豆(枝豆、大豆もやし、黒豆を含む)、
バナナ、まつたけ、もも、やまいも、りんご、
 
・ 特定原材料と表示が推奨される原材料を合わせて「特定原材料等」という。
・ なお、表示されている加工食品の名称から特定原材料等を判断できる場合は、その特定原材料等の表示は省略する代替表記が認められている。
代替表記の例として、バター、チーズ、ヨーグルトなどと表示すれば、牛乳など乳を主原料にしていることを、購入者が理解できるので、改めて乳を使用している旨を表示する必要はないことがとされている。
このような、読み替え可能な食品原材料の記載名称は、通知で示されている。
たとえば、味噌や醤油は、大豆を原料とした食品として認識され得るものとされている。
醤油の場合、上記のとおり大豆は代替表記が認められているが、小麦の代替表記は認められていない。この点には留意する必要がある。
 
食品添加物表示の原則
加工食品等における食品添加物の表示は、原材料の表示の中でも重要な事項である。その原則は、次のようになっている。
 
a.法令等に基づいて定められた基準
・ 食品添加物は、食品の原材料表示の一環として表示する。
・ 食品添加物は、原則として使用したものを全て表示する。
ただし、加工助剤、キャリーオーバー(食品添加物製剤の副剤となるものを含む)となる食品添加物および栄養強化の目的で使用された食品添加物の表示は免除される。
・ 食品添加物の表示には、告示された品名(名称及び別名)、通知で示された簡略名・類別名、食品衛生法施行規則(別表第8)で定められた一括名のいずれかを用いる。
・ 食品衛生法施行規則(別表第5)に定められた使用目的に関しては、食品添加物の物質名と共に用途名を併記する。
・ 簡略名と類別名は、通知で示されているものに限る。
ただし、品名、簡略名・類別名の表示に際しては、誤認を与えない範囲内で、漢字、片カナ、平がなの中から選択して使用することが可能である。
・ 一括名は、食品衛生法施行規則別表第8で定められたものに限る。
・ 用途名は、食品衛生法施行規則別表第5で定められたものに限る。
・ 天然を強調する表示はしない。
 
b.業界の自主的な基準
1989年に食品添加物の全面表示が始まるに際して食品に関連ある業界団体が集まって食品添加物表示問題懇談会を結成して、管轄官庁である厚生省生活衛生局食品化学課の指導の下で、加工食品の製造時に使用する食品添加物が、加工助剤に該当するか、キャリーオーバーに該当するか等を検討し、それぞれに適切な判断基準を設定した。最終的には、生活衛生局食品化学課の諒解を得て、業界内での表示に関する指導を行った。
その際に、食品添加物表示に関してさらに次のような統一方針が付け加えられている。
 
・ 使用目的が同一の場合は、まとめて、連続して表示する。
・ 用途名または一括名と物質名の併用使い分けはしない。
「着色料」による表示と「色素」名による表示の併用はしない。
明らかに同じ使用目的の食品添加物を数種類使用した場合、一括名と物質名を併用する表示はしない。
・ 同一類別名で表示できるものを、類別名と物質名に分けた表示はしない。
 
表示に使われる用途名
加工食品等に食品添加物を表示する際に物質名に併記することが定められている「用途名」は、次のとおりである。
 
甘味料、着色料、保存料、
糊料(増粘剤、安定剤、ゲル化剤)、
酸化防止剤、発色剤、漂白剤、
防かび剤(防ばい剤)
 
表示のための一括名
加工食品等への物質名での表示に代わって、グループ名で表示することが認められている「一括名」は、次のとおりである。
 
イーストフード、ガムベース、かんすい、
苦味料、酵素、光沢剤、香料、
(チューインガム)軟化剤、酸味料、
調味料(注:アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩にグループ分けされる)
豆腐用凝固剤、乳化剤、pH調整剤、
膨脹剤(膨張剤、ベーキングパウダー、ふくらし粉)
 
これら表示に使われる使用目的の名称に関しては、かつて、この食品添加物基礎講座で使用目的ごとに、説明している。不明な名称に関しては、それぞれの口座を見直されたい。
 
 


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