食品添加物基礎講座(23)
食品添加物と表示 (その5)
食品原材料としての食品添加物表示(1)
前回は、食品における表示を、事例を見る形で主としてアレルギーの発症の可能性に関する特定原材料等の表示と、遺伝子組み換技術による操作の有無に関する表示を中心に見てきた。今回から原材料としての食品添加物の表示の仕方を確認する。
 
食品における食品添加物の表示位置
原材料表示において、特別に規定されている場合を除いた一般的な表示方法として、素材としての食品と食品添加物が分けて表示される。これは、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づく加工食品一般の表示基準で定められているものである。
したがって、次のように表示されることになる。
 
@ レモンパン
名  称 菓子パン
原材料名




 
小麦粉・砂糖・レモン味フラワーペースト・加工油脂・卵・マーガリン・乳等を主要原料とする食品・パン酵母・食塩・乳化剤・酸味料・増粘多糖類・着色料(紅花黄・カロチノイド)・香料・イーストフード・保存料(ソルビン酸)・ビタミンC
(原材料の一部にオレンジ、大豆を含む)
内 容 量 1個
消費期限 表面に記載
保存方法 直射日光、高温多湿を避けて保存してください。
販 売 者

 
○○○
大阪市東淀川区×××
(製造所固有記号は表面に記載)
 
この例のように、原材料の表示欄に、まず、素材として使用した食品を使用量の多い順に表示し、これに続けて使用した食品添加物を使用量の順に列挙する方法が一般的である。
この菓子パンは、一つの形になっている。しかし、食品には、食べるまで、あるいは簡単な調理の直前まで、いくつかの素材に分かれたまま、一つの包材に包装されている場合もある。このような場合でも、上記の例のように表示することが多いが、次の例のように素材のグループごとに表示することもある。
 
A 生冷し中華
品  名 生中華めん
原材料名







 
めん〔小麦粉、澱粉、食塩、植物油脂、卵白、酒精、乳酸Na、かんすい、貝Ca、クチナシ色素、(その他、大豆由来原材料を含む)〕
スープ〔果糖ぶどう糖液糖、しょうゆ、食塩、醸造酢、植物油脂、蜂蜜、りんご酢、りんご果汁、レモン果汁、酸味料、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、(その他、小麦、乳由来原材料を含む)〕「」

 
内 容 量 549g (めん重量120g×3)
賞味期限 表面に記載
保存方法 冷蔵庫(10℃以下)で保存して下さい。
使用上の注意 開封後は早めにお召し上がり下さい。
販 売 者


 
○○○株式会社
<郵便番号 住所>
製造所固有記号は賞味期限の下に記載
 
 
この表示方法は即席めん類を含め、さまざまなめん類でよく見られる表示方法である。
スープ、納豆、寄せ豆腐・おぼろ豆腐などでは、添付調味料などを、この例と同様に別に表記する場合が見受けられる。
何種類かの菓子類を一包みにしたような、同種類の私欲品を組み合わせたものでは、それぞれの菓子ごとに原材料を記載している場合もある。
また、主要な食品に使われた原材料を記載した上で、その他の原材料を表示する次のような例もある。
 
B ウエハースチョコ
名  称 準チョコレート菓子
原材料名



 
チョコウエハース(小麦粉、ショートニング、砂糖、ぶどう糖、ココアパウダー、コーンスターチ、植物油脂、脱脂粉乳、膨脹剤、香料)、砂糖、カカオマス、ココアバター、全粉乳、乳化剤(大豆由来)、香料
 
内 容 量 50g
賞味期限 欄外下部に記載
保存方法
 
直射日光、高温多湿を避けて28℃以下で保存して下さい。
製 造 者

 
○○製菓株式会社 KA
<郵便番号 住所>
 
 
さらに、次の例のように素材として使用した食品と、食品添加物を別の欄に表示している例もある。
 
C そばまんじゅう
名 称 生 菓 子 品 名 そばまんじゅう




 
原材料
 
そば粉、小麦粉、あん、砂糖、水飴、鶏卵、
ショートニング
添加物
 
炭酸水素ナトリウム、カラメル、酢酸Na、
アジピン酸、唐辛子抽出物
内容量 10ケ入 保証年月日 枠外記載
   
保証年月日は欄外に、賞味期限という表記の下に表示し、製造元名は住所および電話番号と共に別に表示している。
食品添加物を含めて原材料であることを考慮すると、このような表示は好ましいものとは言えないが、地方の土産物などで見かけることがある。
 
このようにいくつかの記載の仕方はあるが、食品衛生法およびJAS法の2つの法律に基づいて、食品に使用された食品添加物は、一部の免除規定を除き、原則としては全面的に表示されることになる。
なお、上に示した他に、原材料表示の中で、食品添加物を食品の前に表示している事例を見かけることもある。
 
食品添加物の表示方法
上記のように、表示される位置はいくつかあるが、食品添加物の表示の方法は、原則に則ったものになる。
食品添加物の表示に際しては、表示が免除される場合を除いて、物質名で表示することが原則であり、特別の使用目的の場合は「用途名」を併記し、必ずしも個々の物質名を表示することを求める必要がないとされた使用目的では定められた「一括名」での表示も認められている。表示の順序は、多くの場合、JAS法に基づく加工食品一般の品質表示基準に則って、使用量の多い順に記載することになる。
食品添加物の表示に関して定められているさまざまな規定を含む例を、次に示す。
 
D つくだ煮(山椒入りシジミつくだ煮)
品  名 しじみ(山椒)佃煮




 
しじみ、山椒の実、醤油、砂糖、酢、塩、
ソルビット、調味料(アミノ酸等)、保存料(ソ
ルビン酸K)、甘味料(ステビア)、酸味料、リ
ン酸塩(Na)
(原材料の一部に大豆、小麦を含む)
 
この事例では、食品添加物を物質名で表示しているもの、用途名と併記しているもの、一括名で表示しているもの、物質名であるが、特に許されてグループ化して表示しているものが揃っている。
物質名での表示は、D-ソルビトールであり、表示のための簡略名として認められているソルビトールと表示されている。
使用目的を用途名という形で併記することが定められている物質では、保存料と甘味料がある。保存料のソルビン酸カリウム(簡略名でソルビン酸Kと表記)は指定添加物であり、甘味料のステビア抽出物(同じくステビアと表記)は既存添加物である。
調味料と酸味料は一括名である。調味料では一括表示の際に使用した調味料のグループを併記することになっているために、調味料(アミノ酸等)と表示されている。このアミノ酸等は、L-グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸を主体に核酸系や有機酸系の調味料も合わせて使用していることを表している。
リン酸塩(Na)は、3種類あるリン酸ナトリウム系のもの、ピロリン酸二水素二ナトリウムなど4種類が指定されている縮重合系リン酸のナトリウム塩のうち2種類以上を使用しており、しかもリン酸ナトリウム類と縮重合系リン酸塩のいずれ藻を使用していることを示している。これは、指定添加物としては、亜硫酸類と共に、特例的に認められてグループ化した表示が認められているものである。
なお、表示には現れないが、砂糖の抽出や精製の段階で使用される水酸化カルシウムを初めとするさまざまな食品添加物、塩の精製に使われるイオン交換樹脂などの食品添加物などは、加工助剤として表示は免除されている。また、醤油に使われる保存料の安息香酸ナトリウムなどは、佃煮の保存性の付与には寄与しないことから、キャリーオーバーと認められ、表示が免除されている。
 
用途名として物質名との併記が規定されている着色料に関しては、次のような表示方法がとられている。
 
E 組合せ飴菓子
品 名 飴菓子
原材料


 
水飴、砂糖、
香料、酸味料、
着色料(赤102、青1、青2、黄4、黄5)
 
 
様々な絵柄の金太郎飴を組合せて一つの袋に詰めているため、いろいろな着色料が表示されている。
この例で使われている着色料は全て指定添加物である。次に示す事例は、天然系の着色料を使用したものである。
 
F 果実風味のゼリー
名  称 洋生菓子
原材料名




 
異性化液糖、りんご濃縮還元果汁、砂糖、
ゲル化剤(増粘多糖類)、酸味料、香料、着色料(トウガラシ、エルダーベリー、クチナシ、マリーゴールド)、酸化防止剤(酵素処理ルチン)

 
 
このゼリーは3種類のゼリーの組合せであるため、使用されている着色料の種類が多くなっている。ここで使われているうち、トウガラシ色素、クチナシ色素類、マリーゴールド色素は既存添加物であり、エルダーベリー色素は一般飲食物添加物である。
ところで、トウガラシと表示されているトウガラシ色素はトウガラシという簡略名が認められていないので、この例のような場合でも、トウガラシ色素と表示する必要がある。また、クチナシは、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素の3種類のクチナシ系の色素に共通する簡略名である。
用途名に該当する食品添加物を使用した場合は、その全てに対応する物質名を併記することが求められる。
 
ここまでは、用途名の着色料を用いて表示している例であったが、着色の目的で使用した場合、食品添加物の表示に「色」の文字があれば、着色の目的で使われたものと理解されるので、用途名を「色」の文字を含む物質名と併記する必要はないとされている。
このような表示の仕方は、増粘の目的で使用された増粘多糖類に関しても、用途名「増粘剤」との併記は免除されている。ただし、Fの例のように、増粘多糖類をゲル化の目的で使用した場合は、原則どおり用途名との併記が求められる。
「色」を含む物質名による着色料を、表示している例を次に示す。
 
G おつまみ乾燥肉
名  称 乾燥食肉製品
原材料名



 
畜肉(豚肉、牛肉)、植物性たん白、糖類(水あめ、ぶどう糖)、食塩、香辛料、調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、保存料(ソルビン酸)、酸化防止剤(ビタミンC)、発色剤(亜硝酸Na)、赤色102号、
(原材料の一部に小麦、大豆を含む)
 
この例は、指定添加物の着色料で、赤色と色を特定する文字を含んでいる。赤色102号は、指定名称は食用赤色102号で、簡略名としては赤102も認められている。これはEに示したとおりである。
 
H おつまみセット(海苔巻き・ピーナッツ)
名  称 豆菓子
原材料名


 
落花生、もち米、醤油、植物油脂、食塩、海苔、澱粉、砂糖、みりん、こんぶエキス、乳糖、鰹節粉末、かつおエキス、調味料(アミノ酸等)、紅麹色素、カラメル色素、パプリカ色素、香辛料抽出物
 
これも組合せのセットの例で、既存添加物の3種類の物質名が表示されている。着色の目的で使われる既存添加物等には、ほとんどに「色素」の文字が使われており、これを使うことで、着色料の併記を省略できる。
なお、パプリカ色素はトウガラシ色素の別名であり、簡略名としてパプリカおよびトウガラシが認められておらず、着色料と併記する場合の表示の仕方には注意が求められる(Fは間違った例である)。
 
このように、食品添加物の表示に関しては、細かいことまで決められているので、食品メーカーの担当者は表示にミスがないように、充分な検討が求められる。


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