食品添加物基礎講座 (その4)
食品における食品添加物の表示
前回は、加工食品における原材料などの表示について見直したが、今回は加工食品における食品添加物の表示と、食品添加物およびその製剤における表示を見直すことにしよう。
加工食品における食品添加物表示
前回の復習をかねて、加工食品で要求されるさまざまな表示事項をま
とめると、次のようになる。
表示する事項 |
食品衛生法 |
JAS法 |
食品の名称
原材料
素材食品
食品添加物
特定原材料等の情報
遺伝子組換えの情報
原産地・原産国
内容量
期限の表示
保存方法
使用方法・処理方法
製造地・製造国
製造者名・所在地 |
○
○
○
○
<計量法で規定>
○
○
○(特定品)
○(輸入品)
○ |
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○ |
期限の表示は適切な根拠の下に、消費期限あるいは
賞味期限を表示する。
実際には、この2つの法律をともに満たす形の表示を行うことが求められる。
ただ、食品添加物の表示に関しては、表示する位置が規定されているか否かはあるが、表示の仕方は、JAS法の品質表示基準でも、食品衛生法に基づく表示方法によることが定められている。
加工食品における食品添加物表示の原則
加工食品等における食品添加物の表示は、次の原則に従って行われる。
・食品添加物は、食品の原材料表示の一環として表示されるものである。
・食品添加物は、原則として使用したものを全て表示する。
ただし、加工助剤、キャリーオーバー(食品添加物製剤の副剤となるものを含む)となる食品添加物および栄養強化の目的で使用された食品添加物の表示は免除される。
・食品添加物の表示には、告示された品名(名称及び別名)、通知で示された簡略名・類別名、食品衛生法施行規則(別表第8)で定められた一括名のいずれかを用いる。
・食品衛生法施行規則(別表第5)に定められた使用目的に関しては、食品添加物の物質名と共に用途名を併記する。
・簡略名と類別名は、通知で示されているものに限る。
ただし、品名、簡略名・類別名の表示に際しては、誤認を与えない範囲内で、漢字、片カナ、平がなの中から選択して使用することが可能である。
・一括名は、食品衛生法施行規則別表第8で定められたものに限る。
・用途名は、食品衛生法施行規則別表第5で定められたものに限る。
・天然を強調する表示をしてはならない。
さらに、次の条件も加味して表示することになっている。これは、「新 食品添加物表示の実務」(日本食品添加物協会発行)に、自主基準として示されているものであり、1989年に刊行された初版の「食品添加物表示の実務」以来、厚生労働省の諒解済みの事項となってきたものである。
・使用目的が同一の場合は、まとめて、連続して表示する。
・用途名または一括名と物質名の併用使い分けはしない。
「着色料」による表示と「色素」名による表示の併用はしない。
明らかに同じ使用目的の食品添加物を、一括名と物質名を併用する表示はしない。
・同一類別名で表示できるものを、類別名と物質名に分けた表示はしない。
加工食品における原材料等の表示例
ここまで、食品において定められているさまざまな表示と、その中における食品添加物の表示に関する原則を説明してきた。その表示を実例で見てみよう。
@ |
名 称 |
スナック菓子 |
A
|
原材料名
|
乾燥ポテト(遺伝子組換えでない)、植物油脂、デキストリン、野菜エキスパウダー(小麦、大豆を含む)、食塩、オニオンパウダー、砂糖、香辛料、チキンパウダー(卵を含む)、たんぱく加水分解物(魚介類を含む)、脱脂粉乳、酵母エキスパウダー、乳化剤、調味料(アミノ酸等)、香辛料抽出物、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC、チャ抽出物)、酸味料 |
B |
内 容 量 |
85g |
C |
賞味期限
|
底面に表示してあります。
(底面の表示:賞味期限2009.01.11) |
D |
保存方法 |
直射日光、高温多湿をおさけください。 |
E
|
製 造 者
|
株式会社 ○○○○
〒945-86XX 新潟県柏崎市△△4丁目X番XX号 |
|
この事例で、@の名称からEの製造者まで、6項目の必須情報を表示されている。
@欄の食品の名称はスナック菓子と記載されている。このスナック菓子という名称は、食品の名称を例示している通知(2009年9月17日付け消食表第8号別表2)では、菓子の中分類および小分類のいずれにも収載されていないが、通知の基になった分類を行った当時には、このような菓子が販売されていなかったことに起因しているもので、現在では実態を示す適切な名称ともいえる。
次のA欄は、原材料名と共に、遺伝子組換え技術に関する情報とアレルギーに関する情報が記載されている。 遺伝子組換え技術に関しては、遺伝子組換えを行っていない素材食品(じゃがいも)を分別使用しているので、表示は義務付けられていないが、消費者へのアピールとして表示したものと考えられる。
アレルギーに関しては、野菜エキスパウダー中に表示が義務付けられている小麦を原料とする素材と、表示が奨励されている大豆を原料とする素材が使われており、チキンパウダーに表示が義務付けられている卵を原料とする素材が使われていることが示されている。これらの特定原材料等は重複して表示することは必要ではないことから、表示されている原材料以外にも小麦、大豆、卵に由来する素材が使われていることもありうる。このようなことから、すべての原材料を表示した後に、(原材料の一部に小麦、大豆、卵を含む。)などと表示することも認められている。さらに、魚肉練り製品などでは、エビ、カニ、サケ、サバなどの魚介類などが原料として使われる魚の中に混在していることが考えられる。このことから、「たん白加水分解物」、「魚醤」、「魚肉すり身」、「魚油」、「魚介エキス」に限って、魚類を特定しないで「魚介類」と表示することも特例として認められている。これが、「たんぱく加水分解物」に(魚介類を含む)と注記されている理由である。
原材料として表示されている食品添加物は、乳化剤から酸味料までであるが、酸化防止剤に3種類が表示されている。このビタミンE、ビタミンCおよびチャ抽出物は最終食品を製造する際に併用されたのではなく、素材として使われた食品を製造する際に使用されたものと考えることが妥当といえる。
Cの期限表示(賞味期限)では、欄外(底面)に「賞味期限」の文字と期限日が打ち出されている。このように欄外への表示は、多くの加工食品で一般的に採用されている方法である。
Eでは、製造所名として製造業者名が固有記号を使わない形で表示されている。これが基本的な方法といえる。
次に示す表示例は、数箇所に工場を持つ食品製造業者のものである。
@ |
名 称 |
菓子パン |
A
|
原材料名
|
小麦粉、マーガリン、りんごジャム、りんごプレザーブ、卵、ショートニング、発酵風味料、食塩、パン酵母、香料、乳化剤、酸味料・酸化防止剤(V.C、V.E)、ゲル化剤(増粘多糖類)、乳酸Ca、イーストフード、アナトー色素、V.C、(原材料の一部に乳成分、大豆を含む) |
B |
内 容 量 |
1個 |
C |
消費期限
|
表面に記載
(表面の表示:消費期限09.5.17) |
D |
保存方法 |
直射日光、高温多湿を避けて保存してください。 |
E
|
製 造 者
|
○○製パン株式会社
東京都千代田区○○町×丁目×番×号
製造所固有記号は表面に記載
(表面の表示:製造書固有記号YS1) |
この事例では、@の品名からEの製造者までの6項目で必須情報を表示されている。
このアップルパイは、@の名称欄に「菓子パン」と表示されている。アップルパイは生菓子の中分類洋生菓子の小分類にあるが、洋菓子店で製造販売されるアップルパイとは異なり、具(りんご加工品)入りの菓子パンとして作られ、販売されているものである。ところで、菓子パンのうち、アンパンなど3品目は、食品分類では生菓子の中分類に菓子パンが設けられ、小分類として例示されているが、パンそのものは大分類あるいは中分類での例示はなく、食パンなどやデニッシュパンなどは食品分類での例示はなく、パンの個別品質表示基準などに対応する形で記載される。
次のAの原材料名では、素材として使用された食品、次いで食品添加物の順で表示されている。これは、JAS法におけるパンの個別品質表示基準にかなうものである。つまり、小麦粉からパン酵母(イースト)までが素材として使われた食品であり、香料以降が食品添加物である。
また、「小麦粉、卵、りんごジャム、りんごプレザーブ」という表示によって、アレルギーに関する特定原材料である小麦、卵、および表示奨励品目のりんごが使われていることがわかるように表示されており、さらに、「原材料の一部に乳成分、大豆を含む」という表示によって、特定原材料の乳と表示奨励品目の大豆に関する情報も提供されている。
消費期限(C欄)と製造者固有記号(E欄)に関しては、一括表示の外部(表面)に記載する旨の表示があり、表面に表示欄が設けられ、打刻する形で表示されている。
製造者に関しては、社名と本社所在地で表示を行い、製造所名は固有記号により製造工場が示されている。
この他に、JAS法に基づく原料の原産地・原産国や食品衛生法に基づく遺伝子組換え技術に関する情報を提供する表示があるものもある。
このうち、原産地・原産国の表示がある加工食品としては、次の例のように漬物などが代表的である。
@ |
品 名 |
しょうゆ漬 |
A
|
原材料名
|
せいさい、大根、人参、しその実、菊、漬け原材料(醤油、食塩、ブドウ糖、果糖液糖)、調味料(アミノ酸等)、酸味料、ソルビット、酒精、香辛料、(原材料の一部に、小麦、大豆を含む) |
B |
原料原産地名 |
国産 |
C |
内 容 量 |
180g |
D
|
賞味期限
|
枠外右下に記載
(右下表示欄:08 5 20) |
E |
保存方法 |
要冷蔵(0℃〜10℃以下)で保存して下さい。 |
F
|
製造者
|
有限会社○○○漬物店
山形県米沢市○○XXXX
TEL 0238-23-XXXX |
この郷土色の強い漬物(おみ漬)では、原料原産地名を記載する欄を設けていることから7項目になっている。原料原産地名の表示に関しては、この事例のように別欄にする方法と、原材料名欄で、規定されている素材食品の直後に原産国を付記する形式の2種類がある。
漬け原材料の次にある調味料(アミノ酸等)以降が食品添加物の表示になる。本品の表示が農産物漬物の品質表示基準に沿っているときは、「香辛料」は、食品添加物の香辛料抽出物を使用していることを意味する。
アレルギーに関する情報は原材料欄の末尾に一括して注記する方法が採られている。
ところで、遺伝子組換え技術原料の使用に関する表示では、先のスナック菓子の事例の他にも、豆腐など大豆製品を中心に、「遺伝子組換え不使用」などと、遺伝子組換えをしていない旨を表示した食品は見かけることがある。
しかし、食品衛生法の定めによる「遺伝子組換え不分別」という表示は見かけることがあるが、規定が施行されて9年になろうとしている現在でも、「遺伝子組換え原料を使用」した旨の表示のある食品は、見かけたことがない。今後、原材料の入手経路によっては、表示された事例が現れる可能性もある。
食品添加物及びその製剤における表示
販売される食品添加物および食品添加物製剤に表示すべき事項は、食品衛生法施行規則での規定と、表示に関する通知に基づいて実施されている。これらをまとめると次のようになる。
・「食品添加物」という文字
・食品添加物の名称
指定添加物:別表第2の名称またはその別名
ただし、類別で指定されている別表第4の香料は適切な名称
既存添加物:既存添加物名簿収載品目リストの品名欄の名称
一般飲食物添加物:適切な名称
・アレルギーに関する特定原材料を原料として使用した場合は、特定原材料を使用している旨
なお、特定原材料に準ずる原材料を使用している場合は、その旨を表示することが推奨されている。
・製造所の所在地および製造者の住所
輸入の場合は輸入業者とその住所
厚生労働大臣に、固有記号届出をしている場合は、製造者または販売者の氏名と住所をもって代えることができる。(固有記号を併記する。)
・保存基準が定められている場合は、その基準にあった保存方法
・使用基準が定められている場合は、その基準に合う使用方法
ただし、簡略化した使用方法も認められることがある。
・成分規格で、表示量に関する規定がある場合は、その重量%または色価(天然系の着色料に規定がある)
・ビタミンAの誘導体の場合は、ビタミンAとしての重量パーセント
・食品添加物製剤の場合は製剤である旨の表示
使用目的を表す名称+製剤
主要構成成分の名称+製剤
・タール系色素の製剤の場合は、
色素製剤(着色料製剤)+実効の色名
・食品添加物製剤では、その成分のうちの食品添加物(香料を除く)に関してその名称と重量パーセント
・アスパルテームまたはこれを含む製剤の場合は、L-フェニルアラニン化合物である旨の表示
・期限に関する表示
なお、食品添加物に関しては省略することも認められている
ところで、食品添加物製剤の成分名の表示に当たっては、加工食品などで認められている簡略名での表示は認められていない。この点を誤解しないように注意する必要がある。
また、成分・重量パーセントの表示に当たっては、合計を100%になるように、製剤化に使用した水および食品も合わせて表示するという日本食品添加物協会の自主基準がある。
ただし、使用した食品の表示では「食品素材」などと一括して表示することを認めている。
このように食品添加物およびその製剤に関しても食品と同様に、様々な事項を表示するよう、定められている。違反のないように注意して表示する必要がある。
(2010年1月20日 加筆・改訂)
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