食品添加物基礎講座(40)
 
食品の品質の保持(4)
 
食品の保存のために
 
 食品は流通し、消費されるまでに採取あるいは製造してからある程度の期間の経過がある。この間食品の品質を保持するために、清浄な原材料を使用するとともに、その食品の特性に合う適切な対処が求められる。前回は、食品の酸化と、対処する目的で使われる酸化防止剤について見直した。
食品には、流通過程、家庭での保管中にカビ、微生物による変質、変敗するものもある。今回は、この変質、変敗を防ぐ目的で使われる食品添加物「保存料」について考えることにしよう。
 
食品の変敗
 食品の変質の一つに、微生物、特に腐敗菌、による変敗(腐敗)がある。この腐敗を防ぐには、加工食品に始めから菌が存在しない、あるいは極めて少ない数に抑えるようにすることが大切なことである。食品衛生法に基く食品に関する基準や、いくつかの食品で決められている衛生規範等では、この観点から、微生物の数を規制している。たとえば、清涼飲料水では大腸菌群が陰性であること、ミネラルウォーター類ではさらに腸球菌および緑膿菌も陰性であることがその分析法とともに、食品の規格基準で定められており、牛乳では細菌数は1ml当たり5万以下で大腸菌群は陰性であることが分析法とともに「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)で定められている。また、生めんでは、生菌数が1g当たり300万以下、大腸菌(E.Coli)と黄色ぶどう球菌が陰性であることなどが、生めん類の衛生規範(通知)で定められている。
 このような微生物の繁殖を抑えるには、微生物の性質を知り、それに対応する必要がある。
 食品と微生物の関係、その制御に関しては、アサマパートナーニュースの講座(河鍋講座、芝崎講座、藤井講座)や、食品衛生基礎講座などで詳しく説明されている。その解説を参考にされたい。
 これらの微生物の繁殖には、温度、水分(湿度)、pHなどが大きく関与する。この繁殖を抑える最も良い方法は、始めに菌がないことである。また、菌があっても少なければ、毒性を発するまでに増殖するには、時間がかかることになる。このことから、食材の殺菌、食品に残存する腐敗菌などの増殖を抑制する処理などの対応も、一つの対策となる。
 
食品の保存性向上に使われる化学物質
 食品の微生物の増殖を防ぐなど、保存性を向上させる目的で使われる食品添加物には、食品の品質の保持(2)で触れた殺菌料、今回説明する保存料などがある。また、短期間の保存性向上に使われる日持向上剤もある。
 これらのうち、食品の腐敗菌やかびなどの微生物の増殖を防ぐ目的で使用される主な食品添加物が保存料である。
 この保存料は、大きく次のようなグループに分けることができる。
 
・亜硫酸系
・安息香酸類
・ソルビン酸類
・パラオキシ安息香酸系
・プロピオン酸類
・プロタミン
・ポリリシン
・その他(天然系)
 
 これらのうち、亜硫酸塩類は、漂白、酸化防止、保存というさまざまな目的で使われるので、別の回に取り上げることにして、ここでは、その他の保存料に関して見ていく。
 
安息香酸類
 安息香酸は、ベンゼン核にカルボキシル基がついた芳香族のカルボン酸である。古くから静菌性が知られており、安息香酸と安息香酸ナトリウムが食品添加物として指定されている。
 また、エゴノキ科のアンソクコウノキという植物の樹脂「安息香」の中にも含まれており、抽出物は「エゴノキ抽出物」として既存添加物名簿に収載されている。安息香酸類は酸性領域でその効果を発揮する。そのため、pH調整剤などと併用することが一般的である。
 安息香酸と安息香酸ナトリウムの使用基準では、対象となる食品が、キャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップおよび醤油に限定されている。ナトリウム塩はさらに菓子製造用の果実ペーストにも使うことが認められており、いずれも使用量も規定されている。
 なお、エゴノキ抽出物には使用基準は設定されていない。
 使用対象の食品が限定されていることもあり、実際の表示で見かけることは少ないが、次のような事例がある。
名  称 清涼飲料水 
原材料名



 
ハチミツ、果糖ぶどう糖液糖、プロポリス エキス、ローヤルゼリー エキス、酸味料、コラーゲンペプチド、ビタミンC、香料、高麗人参エキス、カラメル色素、保存料(安息香酸Na)、カフェイン、ビタミンB、ビタミンB
 
 古い事例であり、食品素材と食品添加物の分別表示は行われていない。
 
保存料の代表であるソルビン酸類
 ソルビン酸類は幅広い食品で使われている代表的な保存料である。
 ソルビン酸は、2つの二重結合をもつ不飽和の脂肪酸ヘキサジエン酸で、天然界では、ナナカマドの実に含まれているが、食用の動植物に含まれていることは確認されていなかった有機酸である。近年は、各種の動植物中の有機物の分析研究が進められており、ソルビン酸を保有する動植物が確認されることも考えられる。
 カビ、酵母および好気性菌に対して発育阻止作用を有するため、幅広い食品に保存料として使われる。その発育阻止作用は、強いものではないが、酸性領域では強くなる。
 保存料の代表として、一部の反食品添加物運動家から攻撃の対象とされることもあるが、食品の味、香りに影響しないこともあり、広く使われている。
 現在は、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムが食品添加物として指定されており、ソルビン酸カルシウムも指定に向けて安全性確認等の検討が進められている。
 ソルビン酸類の使用基準では、対象となる食品は、甘酒、あん類、うに、果実酒、漬物(詳細後記)、キャンデッドチェリー、魚介乾製品、魚介ねり製品、鯨肉製品、ケチャップ、雑酒、ジャム、食肉製品、シロップ、スープ、たくあん漬け、たれ、チーズ、つくだ煮、つゆ、煮豆、乳酸菌飲料、ニョッキ、発酵乳、フラワーペースト類、干しすもも、マーガリンおよび味噌とされており、さまざまな食品に使うことができる。また、ソルビン酸カリウムは、さらに、菓子に使われる果実ペーストと果汁も対象になっている。これら使用が可能な食品に対する使用量に関しても規定があり、ソルビン酸類を使用する場合には、使用基準を遵守する必要がある。
 
 実際の食品における使用の事例を表示の面から見てみると、次のような事例がある。
名  称 菓子パン  (チョコパン)
原材料名




 
チョコレートフラワーペースト、小麦粉、砂糖、卵、醗酵種、ショートニング、パン酵母、加工油脂、乳等を主要原料とする食品、食塩、乳化剤、増粘多糖類、香料、保存料(ソルビン酸)、イーストフード、カラメル色素、酸味料、リン酸塩(Na)、ビタミンC、(原材料の一部に大豆を含む)
名  称 菓子パン  (カスタードメロンパン)
原材料名




 
ビスケット生地、バニラビーンズ入りフラワーペースト、小麦粉、砂糖、ショートニング、加工油脂、卵、乳等を主要原料とする食品、パン酵母、食塩、乳化剤、増粘多糖類、香料、保存料(ソルビン酸K)、酸味料、イーストフード、カロチノイド色素、ビタミンC、(原材料の一部に大豆を含む)
 
 この2つの事例はいずれも菓子パンである。先に説明した使用基準では、使用対象食品としては、パン、菓子パン(菓子)は含まれていない。この菓子パンでの使用に関しては、いずれもフラワーペーストの保存性の向上を目的に使われたものと考えられる。
 両者では、使われている保存料は、ソルビン酸とソルビン酸カリウムと異なるものになっている。
 この事例のように、使用する食品のわずかな違いが、遊離の酸型かカリウム塩か、いずれが適しているか、使用するときに検討する必要がある。
 次の事例では、このソルビン酸とソルビン酸カリウムの両方を使用していることが、原材料の表示で確認る菓子パンである。
名  称 菓子パン  (マロンパン)
原材料名






 
フラワーペースト・小麦・マロンあん・マロンクリーム・糖類・ファットスプレッド・卵・パン酵母・発酵風味料・でん粉・食塩・植物油脂・ソルビット・乳化剤・膨脹剤・増粘多糖類・メタリン酸Na・pH調整剤・カロテノイド色素・香料・イーストフード・V.C・保存料(ソルビン酸(K))・甘味料(ステビア)・セルロース・(原材料の一部に乳成分・大豆を含む)
 
 この菓子パンでは、ソルビン酸類は、原料のフラワーペーストとあん類であるマロンあんに使うことが認められており、これらに使用したものと考えられる。
 この「ソルビン酸(K)」のように、遊離の酸型とカリウムのような塩を併用したときは、酸の名称の後に、( )の中に塩を構成する金属名を表示する簡略化が認められている。この方法は、限られた表示スペースを有効に活用できるものであり、自社製品の表示に際しては検討の価値がある。
 
 次いで、弁当の事例を見てみる。
品  名 弁当  (いなり寿司)
原材料名


 
いなり寿司 甘酢生姜 調味料(アミノ酸等) 酸味料 pH調整剤 甘味料(ステビア) 着色料(カロチノイド 紅麹 カラメル) 保存料(ソルビン酸K) 香料 乳化剤 (原材料の一部に大豆 小麦を含む)
 
 この事例は、いなり寿司に紅生姜を付け合わせたものである。いなり寿司のような米飯製品は使用の対象になっていないが、付け合わせの甘酢生姜はショウガの酢漬けということで、酢漬けの漬物に該当し、使用が認められており、甘酢のため保存性が高くないため、保存性を向上させる目的で使われているものである。
 
 次は魚肉ねり製品のかに風味蒲鉾の事例である。
品  名 魚肉ねり製品 (にぎりかに蒲鉾)
原材料名




 
魚肉、いか、澱粉、砂糖、卵白、かに、醸造調味料、食塩、小麦タンパク、魚介エキス、調味料(アミノ酸等)、甘味料(トレハロース、D-ソルビトール、ステビア)、保存料(ソルビン酸K)、着色料(ラック、紅麹、カロチノイド)、香料
(原材料の一部に大豆、豚肉、ゼラチンを含みます)
 
 カマボコは、使用基準にある魚介ねり製品そのものであり、ソルビン酸類は、カマボコそれ自体の保存の目的で使用した事例に当たる。
 
 ソルビン酸類最後の事例は、かつて使用していることを問題として取り上げられたこともある漬物である。
名  称 しょうゆ漬(刻み)
原材料名



 
きゅうり、しそ、青唐辛子、葉唐辛子、ごま、唐辛子
漬け原材料【しょうゆ、ぶどう糖果糖液糖、食塩】調味料(アミノ酸等)、酸味料、保存料(ソルビン酸K)、着色料(黄4)
原料原産地名 中国(きゅうり、しそ、青唐辛子)
 
 
 漬物に関しては、先の使用基準の対象食品で詳細は後記する旨記したが、漬物は、かす漬の漬物、こうじ(麹)漬の漬物、塩漬の漬物、しょう油漬の漬物、たくあん漬の漬物、みそ漬の漬物に細分されており、使用基準で異なる使用量が定められている場合もある。本事例はしょう油漬の漬物に該当するものである。
 
 ソルビン酸類を使用していることが、これらの事例のように、様々な食品で見受けられることは、それだけ広く使用されている証と言える。
 
パラオキシ安息香酸エステル類
 パラオキシ安息香酸は、安息香酸のベンゼン核のカルボキシル基と反対の位置(4-:パラp-の位置)に水酸基がついた4-ヒドロキシ安息香酸のことである。
このパラオキシ安息香酸の短鎖のアルコール類とのエステルには、抗菌作用があり、保存料として使われる。現在日本で食品添加物として指定されているものは次の5品目である。
 
パラオキシ安息香酸イソブチル
パラオキシ安息香酸イソプロピル
パラオキシ安息香酸エチル
パラオキシ安息香酸ブチル
パラオキシ安息香酸プロピル
 
 パラベン類とも略称されることも多い、このパラオキシ安息香酸エステル類は、脂溶性であり、水には難溶性の保存料であり、何種類かのエステルを配合し、さらに乳剤化して使いやすくした製剤の形で使われることが多い。その静菌力は、幅広いpH領域で効果があるが、酸性領域での効果が特に優れている。これらのパラベン類の中では、ブチルエステルが最も発酵抑止力が高いと言われている。
 なお、海外では、イソブチルエステルとイソプロピルエステルは使われていない国が多く、逆にメチルエステルを認めている国がある。これは、水への分散性を高める目的で、分枝鎖状のイソ体のエステルが、日本で開発されたことによるものである。
 これらの使用基準は、いずれもパラオキシ安息香酸としての使用量で定められており、対象は果実及び果菜の表皮を除くと、しょう油、果実ソース、酢、清涼飲料水、シロップと水溶液状のものである。
 使用の対象が限られており、市販の家庭用の食品で、表示されているものを見かけることは少ない。
 これらは医薬品や化粧品の保存料としても広く使われている。このため、医薬品や化粧品では、添加剤として表示を見かけることがある。
 これらを使用した食品での表示に際しては、医薬品などとはことなり、パラベンという共通の簡略名が認められておらず、ブチルパラベンのように、個々の名称に対応する簡略名のみが認められているため、パラオキシ安息香酸という共通の簡略名を使うのが一般的である。
 
防かび作用のあるプロピオン酸類
プロピオン酸は短鎖の強い刺激臭を持つ有機酸であり、香料の成分の一つとして配合されることもある。
このプロピオン酸は、チーズ(特に、スイス特産のエメンタールチーズなど)に比較的多く含まれており、カビの発生を抑えることで知られている。
この経験から、プロピオン酸とそのナトリウム塩およびカルシウム塩は、カビおよび好気性芽胞菌の発育を阻止する目的で、保存料として使われてきた。これらは、抗菌力が比較的低く、毒性も低く、さらにパン酵母などへの作用も低いため、パンや洋菓子の製造時の影響が低く、これらの食品の保存性向上に適している。パンにはカルシウム塩が、洋菓子にはナトリウム塩が使われる。
使用基準で、対象となる食品がチーズ、パンおよび洋菓子に限られ、使用量も規定されている。なお、プロピオン酸を着香の目的で使用する場合は、この対象食品に限らない。
このように使用される食品が限定されることから、表示で見かけることは少ないが、気温の高い夏季(5月半ばから10月頃まで)には、次の事例のように、パンや洋菓子で表示されているものを見かけることがある。
名  称 洋菓子
原材料名




 
砂糖、卵、食用植物油脂、パン加工品、ショートニング、加工油脂、粉末油脂、澱粉、ソルビット、膨脹剤、保存料(プロピオン酸Na)、乳化剤、安定剤(キサンタンガム)、酢酸Na、グリセリンエステル、pH調整剤、香料、カロチン色素、(原材料の一部に乳、大豆、ゼラチンを含む)
 
 なお、この洋菓子では、この連載で後日取り上げる日持向上剤(酢酸Na、グリセリンエステル)も使われている。これらの併用により、日持ちの向上を図っているものと考えられる。
 
プロタミン
 プロタミンは、魚類の雄の「しらこ」に含まれる強塩基性のたんぱく質で、塩基性アミノ酸であるアルギニンの含量が高い。
 既存添加物には「しらこたん白抽出物」という名称で収載されており、しらこたん白、プロタミンなどが別名として使われている。
 食品添加物として使われる「しらこ」は、アイナメ、カラフトマス、シロザケ、カツオ、ニシンから得られたものが使われる。
 プロタミンはグラム陽性菌に対する抗菌作用が強く、加熱に対する耐性があり、中性域からアルカリ性域で抗菌性を発揮する、他の保存料ではみられない特徴がある。デンプン系食品では、抗菌性に影響を受けることはないが、たんぱく質系食品では、抗菌性が低下する。このことから、米飯、蒸しめん、蒸しパン、うどんなどのデンプン食品、和菓子類などを中心に、クリーム類、つくだ煮や惣菜類、加熱工程のある水産ねり製品、畜肉製品などに使われる。なお、食品衛生法に基づく使用基準は設定されていない。
 プロタミンを使用した食品の表示の事例を示す。
名  称 洋生菓子  (エクレア)
原材料名


 
全卵、小麦粉、マーガリン、準チョコレート、砂糖、乳製品、植物油脂、水あめ、卵黄、牛乳、でん粉、デキストリン、食塩、グリシン、香料、膨脹剤、乳化剤、安定剤(セルロース)、保存料(プロタミン)
 
名  称 焼菓子
原材料名


 
さつま芋・砂糖・麦芽糖・バター・植物性油脂・卵黄・生クリーム・洋酒・食塩・保存料(グリシン・しらこたん白・さけ由来)・乳化剤・香料・酸化防止剤(V.E)・着色料(カロチン)(原材料の一部に大豆を含む)
 
 始めの例では「プロタミン」で表示、後の事例では「しらこたん白」が使われている。この他に、「しらこ」と表示される例もある。
 
ε-ポリリシン
 塩基性アミノ酸であるL-リシンのε-位(6-位)のアミノ基とカルボキシル基がアミド結合し、直鎖状につながったものが、ε-ポリリシンである。
 このε-ポリリシンは、ストレブトミセス アルブルスという放線菌の培養液中に蓄積され、菌体を除去した後、精製して得られる既存添加物である。リシンの重合度は25〜35と言われている。抗生物質に類似する形で生成され、抗菌作用があり保存料として使用される。
 さまざまな菌の生育を抑制するが、カビには効果が弱いとされる。デンプン系の食品で使われることが多い。
 多くの既存添加物と同様に使用基準は設定されていない。
 ε-ポリリシンの使用例を表示の事例で見てみる。
名  称 菓子
原材料名/砂糖・卵・小麦粉・加工油脂・黒豆かのこ・ココア・濃縮乳・ぶどう糖・シナモン・ソルビトール・乳化剤・膨脹剤・甘味料(ステビア)・グリシン・保存料(ポリリジン)・(原材料の一部に大豆を含む)
品  名 弁当   (深川めし)
原材料名:あさりご飯、焼穴子、ハゼ甘露煮、あさり淺炊、付合せ(原材料の一部に小麦、卵、乳、大豆、鯖、豚を含む)
調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、酸味料、酸化防止剤(V.C)、甘味料(スクラロース、カンゾウ)、着色料(カラメル、クチナシ、紅麹、アナトー、黄4)、凝固剤、保存料(ソルビン酸K、ポリリジン)、香料
 
 ε-ポリリシンはポリリジンという簡略名が認められており、多くの場合、この簡略名で表示されている。
 2つ目の弁当の例では、ソルビン酸カリウムと併用されている。ソルビン酸カリウムはおかずに使われ、ご飯にはポリリジンが使われたものと考えられる。
 
その他
 これらの他にも、カワラヨモギ抽出物やツヤプリシン(抽出物)のような既存添加物が保存料としての機能を持つと認められるものがある。実際の使用例は少ないようである。
 
保存料のシネルギスト
 保存料多くは、酸性領域でその保存効果が向上する酸型保存料である。そのため、予め有機酸などの酸およびその酸性塩などを配合した食品添加物製剤が研究、開発されている。この酸類は、酸化防止剤の場合ほど顕著とは言えないが、シネルギストと考えられる。このシネルギストとしての有機酸とその塩類などの配合量を、主剤となる保存料の50%以下で、かつ製剤中の20%以下の場合は、副剤とみなされる。
 一方、しらこたん白抽出物は弱アルカリ領域で効果が上がるため、アルカリ側になるpH調整剤などが併用されることもある。このような弱アルカリ剤も同様に副剤と認められている。
 
使用した食品での表示
 ここまで説明してきたような、保存料を使用した場合には、その食品に、用途名「保存料」と使用した食品添加物を物質名で併記することが定められている。
 また、製剤に配合されて副剤と認められる場合は、その成分の表示は免除される。ただし、食品の製造時に保存料とシネルギストに当たる物質を併用した場合には、それぞれが表示の対象となる。この点には充分留意する必要がある。
 また、保存料を使用した食品を原料に使って、新たな食品を製造する場合には、最終食品で保存料として微生物を制御する効果が持続するか否かで、表示すべきか否かがことなる。加工食品での表示に際しては、充分な検討が求められる。
 
(次回に続く)


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